「グローバル人材」の就職と進路 (高井哲彦 vol.5)

留学マニュアル

留学経験者の就職・進路はどうなるのか。経済学部高井ゼミ卒業生を例に取ると、3つの傾向があります。①(とくに途上国・二段階の)留学の経験者はグローバル企業での就職活動が順調です。②留学経験者が海外駐在する比率は非経験者の2倍以上ですが、留学と海外駐在は直結しません。③海外事業に直接関係しない仕事をする留学経験者が大半です。なお、高井ゼミではゼミ生の過半数が留学し、その過半数が二段階留学です。総数は百数十名で、最年長の卒業生は入社10 年強の中堅です。
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◇ 留学した国に海外勤務している
短期プログラムをファースト・ステップ、交換留学をセカンド・ステップ、海外勤務や海外大学院進学をサード・ステップと、グローバルな進路形成を考える三段階論があります。留学の延長上に将来進路があるならば、サード・ステップとしては「順調」でしょう。しかし、学部生時代の交換留学後、いまも同じ国に定住している事例は、私の知る限りごく少数です。交換留学先と同じ国の大学院に再留学して学位取得し、人格・人脈網を形成した人がそこに残るようです。
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◇ 留学した国以外に海外勤務している
海外勤務の機会があったとしても、留学国とは別の国がほとんどです。実際、海外勤務にあたり留学経験が斟酌されるとしたら、当該国の言語力や文化理解よりも、英語力や多文化適応性の方が重要なようです。そもそも、仕事ができるか否かの実力は、言葉が現地人並に流暢か否かというスキルとはあまり関係ないでしょう。文理系の専門を持つジェネラリストを目指した場合、特定国に固執する理由がなく、専門や経験を武器にどの国でも仕事できるはずです。現地語を話せないまま赴任することも多く、必要ならば着任時に語学研修を命じられます。
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◇ 留学経験者だが海外と関係ない仕事をしている
「将来、国際的な仕事をしたい」と留学を志す学生は多いですが、実際に国際的な仕事をする人は、現時点ではまだひと握りです。留学後に公務員試験に合格し、国内行政で活躍する人もいます。そもそも、1 年間の学部交換留学だけで国際的な仕事はできません。海外修士号か一定年数の勤務経験があって初めて、国際的なポストの雇用対象になります。海外開催の日系企業の留学フェアでも、交換留学生はほぼ対象外です。
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他方、留学経験があると、国際的規模で活動する大企業に採用されやすいのは事実です。留学経験や TOEIC 高得点を最低条件にする企業もあります。ただ、それは足切り条件に過ぎず、留学だけでは自己アピールになりません。留学で何をしたか、何を学んだか、より一般的な挑戦力や適応力の方が問われます。
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◇ 留学未経験者だがその後海外勤務している
学生時代に海外にまったく関心がなくても、卒業後に海外勤務を命じられたり、外資系企業に転職したりする例が、意外にあります。強いていえば、学生時代に留学経験者が身近だったため、海外に抵抗を感じないことが関係しているかもしれません。
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20 歳後半以降に海外渡航する場合、留学経験者のように現地人に同化するというより、日本人固有の長短所を併せ持つ海外生活スタイルになるでしょう。が、完璧に意思疎通し、現地人と対等に仕事し、恋したり喧嘩したりすることは、十分に可能です。実際、海外永住者には、強いアクセントで訛りながら大活躍している人がたくさんいます。
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