二段階留学のすすめ (高井哲彦 Vol.5)

留学マニュアル

■二段階留学とは何か
 いきなり長期留学をするのではなく、2回以上に分けて留学(短期プログラム含)することを、ここで「二段階留学」と呼びます。「ダブル留学」や「マルチ留学」と呼んでも良いかもしれません。
 地方大学生や社会科学系・理工系専攻者には、海外留学を考えたこともない人がいます。たとえ多少関心があっても、交換留学や大学院留学には、語学力や国際経験のハードルが大きすぎて、踏み切れません。ところが、二段階留学は、その不利を挽回できるほぼ唯一の手段でしょう。
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■二段階留学の注意点
①二段階留学は、2回渡航する分、時間のロスや再適応のリスクもあります。学部生なら、試行錯誤のコストは問題にならないと思います。が、大学院生以上の場合、慎重さが必要です。短期プログラムでも休職等の犠牲が大きく、専門的かつ計画的な一貫性がないと割に合いません。
②中間評価が最重要です。とくに語学留学後は出席証明書と語学スコアを指導教員に提示し、費用対効果を検証したうえで、次段階を再設計するべきです。
③二段階の途中で方向転換する場合もあります。次段階の長期留学を見送り、就職活動に切り替え、最短距離で優良企業に内定しました。一昔前の長期留学ならば、夏目漱石のようにノイローゼになっても帰国しないのが官命でしたが、時代錯誤です。
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■二段階留学の長短所
① 自分が留学に向いているか試せる→「短期プログラムのすすめ」。
→〇海外初心者でも、交換留学や大学院留学を目指そうか否か、具体的に検討できる。
→X 留学初期特有の高揚感で、根拠もなく自分の国際的キャリアを楽観視するかも。
② TOEFL-iBT スコア等を急上昇させられる→「語学留学のすすめ」「大学院留学のすすめ」。
→〇語学力初心者でも、交換留学や大学院留学、留学奨学金にステップアップできる。
→X 語学研修に失敗し、交換留学・大学院留学の最低基準を満たせないかも。
③ 先進国の学問力と途上国の行動力を身につけられる→「先進国留学のすすめ」。
→〇どこでも通用するジェネラリストになる。地域限定のスペシャリストに甘んじない。
→X 先進国か途上国の両方に適応できるとは限らない。虻蜂取らずかも。
④ 「英語+1」のスキルと視点を身につけられる→「20 年先を読む成長国留学」。
→〇トライリンガルのスキルと柔軟性は、学部・修士留学者と同等かも。
→X 英語も第 2 外国語も中途半端になるかも。
(結論) 多少のロスやリスクがあっても、フレキシビリティのメリットの方が大きいのではないか。
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■二段階留学の 5 つのパターン
◇短期プログラムと留学
1学期以上の留学に踏み切る前に、まず夏休みや春休みに短期プログラムに参加するのは、自分の適性を観察するのに最適です。とくに途上国留学希望者の場合、途上国経験は不可欠でしょう。本体験記にも、北大ファースト・ステップ・プログラム等のスタディ・ツアーに参加し、その後、交換留学した事例が少なくありません。短期プログラムは、留学希望先と関連する国を選ぶより、自分が必要とする知見や経験で選んだほうが良いでしょう。
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◇語学研修と交換留学・大学院留学
交換留学や大学院留学、奨学金には、高度な語学力(TOEFL-iBT80 等)が必要です。まず3-6ヶ月の集中語学研修を行い、大学院入学水準の語学資格を取得するのは選択肢です。
① 第二外国語で専門科目を学ぶ場合、日本の大学教育だけでは講義をまったく理解できないはずなので、事前に集中語学研修が必須です。
② 交換留学中、語学力不足を痛感して、専門科目と平行したり、夏季休暇に私費で自己投資したりして、語学研修を行う人もいます。
③ 海外の名門大学院は、一般の日本人では入学も卒業も難しいので、まず交換留学をしてから入試選抜を準備するのが現実的です。難関の奨学金も同様です。
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◇途上国留学と先進国留学
 途上国で現場経験や生活力を身につけ、先進国で専門知識や論文力を磨くのは理想的です。途上国交換留学は、費用も安く、人脈や視野も広がり、現地調査も実現できます。ビジネスの国際的な仕事の舞台は途上国でしょう。他方、先進国は、教育カリキュラムに一日の長があります。専門科目や大学院ならば、先進国で対等な競争を経験するのは有益です。
 特定国限定のスペシャリスト(いわゆる「語学屋」)は需要が激減しました。どの国にも対応可能なジェネラリストを目指す方が、就職・活動範囲が広がるでしょう。そのためには留学国に限定せず複数国に応用できる一般理論や専門が重要です。先進国にも不真面目な交換留学生がいる大学はありますし、途上国にも教育効果の見込まれる超名門校があります。
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◇英語圏留学と非英語圏留学
 TOEIC730 以上の英語力に加え、第二外国語も最低限を習得できると、「英語+1」の二刀流として有意義です。英語を母国語とする人と対等に仕事するためには、英語圏で専門科目を学ぶ経験が役立つはずです。他方、中国語圏、fスペイン語圏、アラビア語圏、ロシア語圏などでは、英語が通じない人も多いです。第二外国語でも、語学力ゼロから 3-6 ヶ月で、大学入学水準(中国語の HSK6 級や仏語の DELF)まで身につけた先輩もいます。
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◇就職活動・卒業研究の前と後留学成果を卒業研究や進路に活用するには、就職活動の前に留学することを強く勧めます。卒業直前に留学するのでは、新しい知見を自由に活かす時間が少なく、もったいないです。他方、留学経験者が就職や進学を内定してから2度目の留学するのも、卒業論文・卒業単位次第では、不可能ではありません。実際、一度留学の面白さを知り、語学スコアも高い経験者が、やり残した課題を再挑戦する事例は少なくありません。ただし、留学は卒業旅行ではありませんし、同一人物が2度交換留学する前に、定員上限と機会公平にも配慮が必要です。
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