インド デリー大学 & 英国 エジンバラ大学 交換留学 (相川 新着2015)
参加プログラム
交換留学(インド→イギリス2段階留学)
留学期間
インド 2014年12月〜2015年5月
イギリス 2015年9月〜2016年1月
留学の目的
・ 急速な経済発展を遂げるインドを肌で感じる
・ イギリスで世界トップレベルの講義を受ける
・ 2段階留学をもとに卒論を執筆し、将来のキャリアに生かす
費用
インド
イギリス
1週間のスケジュール
デリー大学
エジンバラ大学
留学前後のスケジュール
スケジュール
留学前
デリー大 留学中
デリー留学後(エジンバラ前)
エジンバラ大 留学中
留学後
はじめに – 2段階留学の可能性
今留学を迷っている人に最も伝えたいこと、それは「2カ国に留学してもいいんだ」ということである。その中でも途上国と先進国の二つを見てはどうだろうか。これを推す理由は幾つかあるが、一言で言うなら世界を知ろうということである。
今や留学は当たりまえになってきている。北大でも毎年数十人の人が海外を経験している。しかしそれで、「〇〇に留学をした、だから海外は」というのはおかしな話である。これは「大阪に行った、だから日本は大阪みたいな雰囲気の国だ」と言っているようなもので、日本のすべてが大阪でないように、世界をたった1カ国で語ることはできない。2カ国でも変わらないという人もいるかもしれないが、2カ国の留学をすることで初めてわかることは非常に多い。例えば文化や価値観の違いをこれまでは日本という判断軸でしか比較できなかったものが、もう一つ軸が増えることで見えてくるものは大きく異なる。そしてそれが途上国と先進国というコインの裏表のような存在ならばなおさらだ。私自身もインドとイギリスという2カ国を経験して視野も視座も大きく広がった。加えて私が強調したいのは旅行ではなく「留学」をすべきだ、ということである。旅行で色々な国に行くことはできる。しかし旅行なら老後時間もお金も余裕があるときにすればよい。留学は今、学生のうちにしかできない。1週間や2週間ではなく、数ヶ月間その場所に住み、同じ学生と切磋琢磨しながらその地域の文化や考え方に染まることで初めてその国の本質が見えてくる。この体験記を読んで、2段階留学を視野に入れる人が一人でも増えてくれればと思う。
インド・デリー大学 交換留学
きっかけと目的 〜なぜインド!?〜
私が初めて海外に行ったのは大学一年生の終わりだった。北大が毎年行っているスプリングプログラムでニュージーランドへ語学留学に行くというものだ。大学入学時から留学に行きたいとぼんやり考えていた私はとりあえず行ってみようと考え応募し、1ヶ月間の短期留学を経験した。結果から言うと、自身の中で大きな変化はなかった。ちょっと海外との距離が近くなったなという変化はあったものの、なんとなく授業を受け、友達と旅行し、美味しいものを食べ、ふかふかのベッドで寝る、という何不自由ない毎日を過ごした。高井先生に留学相談をしたのは、NZから帰国し留学ってこんなものかと思っていた頃だった。それでも長期留学を経験してみたいと感じていた私は先生の「じゃあ途上国留学は?」という言葉に何となく惹かれ、インド留学を決めた。理由は単純にインド映画を見たことがあり、面白そうだったからだ。インド留学に先立って「アジアも見てきなさい」という先生の言葉を受けて、東南アジアをバックパッカーとして陸路横断したのは留学の一年ほど前である。そこで私が見たものは自分の想像とは真逆の世界だった。カンボジアやラオスで見た人ごみや貧困、格差に大きく心動かされ、なんとなくだったインド留学が初めて形になった。
大学の手続きとVISAについて 〜途上国留学最大の障壁〜
インド留学の最大の障壁は大学の手続きとVISAの取得である。インド留学を決心し10ヶ月前には無事応募手続きを済ませ、デリー大にも申請を行った。ところがデリー大学側からは一向に返事が来ず、初めて返事がきたのは最初のメールを送った2ヶ月後であった。しかしこれは途上国留学者のほとんどが経験する通過儀礼のようなものだ。基本的にメールは1度送るだけでは返事は返ってこない2度3度メールを送ってやっと相手にしてくれるのだ。先にもあげたがインドに限らず、ベトナムやフィリピンなど途上国の大学手続きに共通するものなので留学を志す人はこの点をよく覚えていてほしい。留学許可は下りた後も問題は尽きない。詳しい情報などが一切来ず、何と留学直前には留学許可の取り消しの連絡が来たのである。こちらには何の不手際もなかったはずだがこう言ったこともどうやらよくあることらしい。デリー大学の授業が開始後になってしまったが、何とかこの問題も解決し留学許可は下りた。改めて交渉にあたってくださった高井先生、玉城先生には感謝しても仕切れない。
またインドビザは世界で最も面倒なビザと名高いように、Student VISAは基本的に1ヶ月近くの審査期間を必要とする。加えて申請には大学からの入学許可証や住宅証明など多くの書類が必要になる。しかし留学手続きの難航により一度インドに観光ビザで入国後、書類受け取り→一時帰国、申請→再渡航という形になってしまった。結果的に審査もすぐ通ったため1週間程度で戻り、講義にも支障をきたすことはなかったがここで学んだ教訓は「途上国留学の手続きはとにかく早めにすべし」ということである。
留学中の生活 〜これでインディア!?〜
① デリー大学とは
基本的にデリー大学という大学は存在せず、小さなカレッジの集合のことを通称デリー大学と呼んでいる。大小100近くのカレッジが存在しその中でもShri Ram College of Commerce、St Stephen’s collegeの二つがインドの人文科学系大学のトップである。内閣もこの2大学出身の人で組織されることが多く、ほとんどのインド人が知っているほど有名な大学で私は後者の方に留学することとなった。ちなみに北大では前者の方に二人ほど留学者を出した実績があるが、後者は私が一人目だった。
② インドという国、デリーという街
ご存知のようにインドは私たちの想像をはるかに超えた世界である。途上国の一つして有名ではあるが、その雰囲気は一般的な東南アジア諸国(カンボジアやラオス)とは大きく異なっている。中でも特筆すべき点が次の三つである。
1つは人と人との距離である。一般的にアジア諸国では人と人との距離が近く、途上国でおじさんと仲良くなっておごってもらったみたいな話はよくある。しかしインドの人の近さはそれを超えている。男同士でも仲が良ければ手はつなぐし、同じベッドで寝ることもよくあることだ。これは恋愛関係など性的な問題ではなくとにかく人が好きなのである。インド人の平均通話時間は世界一というデータもあるくらいだ。インドに行く人は到着後よく体を触られたりするかもしれないがこれはインド人同士でもよくあることなのでそこまで気にする必要はない。
2点目は食事である。後述するが、ご存知のようにインドといえばカレー。メニューには~curryなど書いてはいないがほとんどがカレーのメニューである。もちろんカレーは基本的に美味しいものの問題はそこではない。問題は衛生面に関してだ。インドではどんなものを食べても必ずと言っていいほどお腹を壊す。なぜかと言われれば衛生面に関する意識が薄いとか、ウイルスのせいとか憶測ではいくつも挙げられるが決定的な理由はよくわからない。しかしカレーを食べればお腹を壊し、ラッシーを飲めば下痢をし、と食と衛生の問題はインドの登竜門的な存在であることは間違いないのである。これに関しては正直慣れと気力でなんとかするとしか言いようがない。日本の胃腸薬でもある程度は抑えられるが防ぐことは不可能だ。強いて言うなら生水や氷などを使ったと思われる食事を避けることぐらいだろう。いずれにせよ一月もすればお腹も慣れてはくると思うのでそれまでは辛抱してカレーと対峙するしかない。
3つ目は女性の地位についてである。これは非常に大きな問題で今後インド渡航を考えている人、特に女性はよく注意してもらいたい。インドでは基本的に女性の社会的地位が男性に比べて低い。近年少しずつ女性の社会進出も見られるが、カースト制度に基づくこの慣わしは大変根深いものである。強姦や女性を狙った殺人事件の発生率の高さはこれを象徴しているといえるだろう。特に気をつけるべきは首都デリーである。他の地域に比べ犯罪発生率は非常に高く、それも外国人旅行者であることが多い。たまに女性一人でインド旅行をしている方など見かけるがよほど自信がない限りお勧めはしない。決して治安が最悪、というわけではないが女性にとっては特に危険な地域であることは間違いないだろう。しかしもちろんある程度途上国での常識があれば未然に防ぐことができる。例えば男性女性問わず夜日が暮れて以降は一人で出歩かない、話しかけられてもついていかない、荷物には鍵をつけるといったようなことだ。この辺りはインド旅行をしている方のブログ等があるので入念に調べておきたい。インド渡航を考えている女性は人並み以上の注意力や準備が必要だと言える。
他にも人の多さや異常なまでの気温など注意点には枚挙にいとまがない。しかし上記の3点さえ気をつければインドのショックを少しは抑えることができるだろう。逆に言えばとにかくそれでもショックを抑えられないくらいすべてが日本と違う国なのである。まさに「Incredible India」なのである。
③ 大学の講義について
まず各学部の人数は40人ほどであるためそこに混ざって講義を受けるスタイルだ。大学の講義は基本的に日曜以外毎日ある。毎日授業はきつい、と思うかもしれないが1科目1時間という長さなのでそこまで苦痛にはならないだろう。私がとっていたのは以下の二つである。
ⅰ. International Economics
日本でいう国際経済学だ。日本でミクロマクロの基礎を学んだ経験があればそこまで苦労はしない。授業はクルーグマンの国際経済学の教科書に沿って行われる。週5日の講義と1日のチュートリアルがある。チュートリアルとは簡単に言えば授業の復習の時間である。1グループ6人に分かれて先生と1:6で授業の質問や講義で気になった点についてディスカッションを行う。評価は中間レポート・試験と期末試験である。
ⅱ. Development Economics
日本でいう開発経済学である。教科書については様々な某有名教科書10冊程度からの抜粋コピーが使われる。しかもそれが一冊にまとめられて大学で売っており、1冊300円程度というなんともインドらしいものである。これで国際経済同様、教科書に沿って講義とチュートリアルで進んでいく。
以上二つの講義を取っていたが、共通して言えることは暗記量の多さである。基本的に分厚い教科書をたった4ヶ月ほどで丸暗記させられ、それが中間期末試験で問われるのだが、その量があまりに膨大である。多くのインド人学生はテスト前になる部屋から出てこなくなり1日10時間以上ひたすら教科書を丸暗記するよう努めるのである。これはインドの大学どこでも共通したやり方なのだが、これに関してはよく議論の対象になっている。例えばインド人はこのスタイルのおかげで知識の量が人並み以上だが、自分で考えるスキルがないといったようなものである。加えて卒業論文もほとんどの学生はないので自分で物事を考えて論文を書くといった経験がインド人学生はほとんどない。
住居と食事について 〜カレーはつらいよ〜
① 住居
住居については大学備え付けの寮に住んでいた。6畳ほどの部屋で風呂トイレは共用である。Wifiは弱いながらも通ってはいるので連絡等で困ることはないだろう。
② 食事
寮に調理スペース等はないので基本的に朝昼晩と大学の学食で食べることになるのだが、これが大変である。3食全てカレーで、それ以外のものがでたとしてもどれもスパイスが効いた同じような味ものである。2週間もすれば気付くと全身からカレー臭が漂うようになり、自分がインド人になっているのだと気づくはずだ。もちろん大学の周りにはイタリアンや中華のレストランも多くあるので気が向いたときは外食もできるが、インド料理の代表、カレーを食べずしてインドで生活することは不可能だといえる。
留学を終えて 〜インドの価値観に染まる〜
インドに留学した経験は自身の人生を大きく変えるターニングポイントとなった。とにかく様々なことを感じ、学んだ半年間だった。特に以下の3つの点はインドにいかなければ学べなかったことだと確信している。
①“今”のインドで青春を過ごしたこと
近年その急速な経済発展からインドが注目され、メディアでも目にすることが多くなった。実際にインドでその熱気や経済発展を目にするとそれをまじまじと実感するのである。しかし一方で注目しなければならないのはその経済発展の歪みである。急速な発展は雇用を吸収できず、多くの失業や格差を生み出している。加えて街の中心部は日を追うごとにその風景は変わっている。つい1ヶ月前まであった建物がなくなって、ビルが建っているというのはよくある話である。インドに住む誰もが言うのは「20年後今のインドはない」ということである。この今のインドを見て、半年間住み、熱気を肌で感じた経験は自分の価値観大きく変える出来事となった。
② 自分の限界を知る
インドに長期間住むのは想像以上に苦痛を伴う。特にデリーはインドでも最悪と言われるまでの大気汚染にさらされ、気温も冬は0度まで下がり、夏は50度にまで上昇する。しかし最も大変なのはこのような身体的な面ではなく、異なる文化と価値観という精神的な面である。食も人の性格も生活スタイルも何もかも日本違う中で半年間生活するのは非常に大変だった。一方そういった中で自分がそこに適応していくためのスキルを得たことや、そしてこれ以上追い込むのは危険だといった自分の限界を知るといったことはインドでこそ身につけられるものだったと今振り返れば感じる。今後も海外に行くことはあるだろうが、インドで身につけた能力は間違いなく他の国でも生きるということを改めて実感している。
③ インド人になる
インドで生活をしていると「なんでこうなんだ!」とイライラすることが多い。それは先に挙げたような事務手続きの遅さや人を騙すような性格である。これには何度も悩まされたが、ある時ふと思った。「ここはインドなのだから自分もインド人になるべきだ」と。郷に入っては郷に従えとはまさにこのことでインドに住むにあたって、最も大切なのは身も心もインド人になるということである。これは毎日カレーを食べろとかそういうことではない。彼らには彼らなりの考え方がある。だから日本人という価値観を押し付けるのではなく、彼らの側から見た世界で生活するということである。こう考えるようになってからはインドでの生活は一気に楽になった。ちょっとしたことには気にしないで、おおらかに生活する。その中で家族や友達など大事なものは大事にする。それがインド人の価値観であり考え方である。現地の文化に身も心も染まるべし、というのはインドに限ったことではない。自分の価値観を押し付けるのではなく、相手の価値観を理解しようとする態度こそ今この国際社会で最も必要なものではないだろうか。こう感じさせてくれたのもインドで半年間生活できたおかげである。
これら3つのことを感じ、経験した私が留学を終えて最も感じたこと。それは、ではインドとは真逆のヨーロッパはどうなのだろうかということである。ヨーロッパの学生や生活、考え方はインドのそれとはどう違うのか、こういった考えから私が次に選んだのはかつてインドを植民地としていたイギリスだった。
イギリス・エジンバラ大学 交換留学
はじめに 〜インドからイギリスへ〜
先にも挙げたようインドを経験し全く別の世界を見たいと考えるようになった私はインドと大変関係が深いイギリスを次の留学先に選んだ。インド渡航前から高井先生の勧めもあり、先進国への留学を決めていた。というのも先輩が高井先生から言われた「自分の興味のない国だからこそ、精一杯寄り道をして何かを見つけてきなさい」という言葉に大きく感銘を受けたからである。しかしまさか自分がイギリスに行くとは考えていなかった。というのも実はエジンバラ大学は自分が一年生のときに初めて北大の交換留学先で興味を持ったところだったからである。それと同時にその求められるレベルの高さから自分には無理だと断念していた大学だった。しかしインド留学中にIELTSを受験し、そのスコアではなんとかそれを満たすことができたのである。このように英語のスコアを引き延ばしてより良い大学へ行ける、というのも2段階留学の一つのメリットかもしれない。
渡航前後の手続きについて
イギリスはインド留学と違い留学申請の手続きが非常にスムーズで、形式化されているものだった。そのためとくに手続きで困るようなことはなかった。
① 渡航前(申請とVISAについて)
渡航前には北大を通して留学申請をするだけでなく、エジンバラ大学の留学生専用のページからも申請をする必要がある。これは英語スコアのアップロードや留学中の寮の申請、学生証に必要な情報の入力等である。基本的に指示通り進めていけば困るようなことはないだろう。しかし一点注意すべきことは、寮の申請についてである。エジンバラ大学は留学生だけでも何百人といる巨大な大学であり、そのため寮はすぐに一杯になってしまう。自身も後でやろうと放置しているうちに寮がすべて埋まってしまいホームステイをすることになってしまった。寮の申請だけは早めにするよう心がけたい。またイギリスは学生ビザの取得に、留学申請後送られてくる大学受け入れ許可や住居証明、英語スコアが必要だ。そのためこれらを入国時に見せ、ビザを取得する必要があるので忘れないように注意したい。詳しくはイギリスのVISAのページに載っているので渡航前に必ず最新の情報を入手すべきである。
② 渡航後
渡航後に関しても基本的に指示通りに従っていれば特に問題はない。授業スタートの前の週には留学生のためのガイダンスがあり、留学生活について詳しい説明をしてくれる。留学生対応のオフィスも平日は夕方までオープンしているため困った際はそこに行くと相談に乗ってくれる。また最初の週にはいろいろなサークルがイベントを開催したり、学内オリエンテーションなどを開催してくれる。友達を良い機会にもなるので是非参加しておきたい。
大学について
① エジンバラ大学(University of Edinburgh)
正確にはイギリスの中でも北部のスコットランドにあるエジンバラ大学はある。本大学は1583年に設立され、イギリスでも六番目に長い歴史を持つ大学だ。エジンバラは町の建造物の多くが世界遺産に指定されており、大学の建物もそのうちの一つとなっているほど美しいものばかりである。世界大学ランキングでも常に上位に位置しており、研究・授業ともに質は世界トップレベルである。世界に衝撃を与えたクローン羊の「ドリー」もエジンバラ大学の研究機関で生まれたものである。
② 大学の講義について
私が留学中に履修していた科目は以下の3つである。どの講義も非常に質が高く、どれを取っても学べることは多いだろう。
ⅰ. Business Economics 企業経済学
本講義はミクロ経済学の応用分野に位置する。ミクロの基本的な知識をもとに企業の経営戦略やマーケティングについて経営よりもより経済学的な視点から分析する。大講堂での講義が週2回、とチュートリアルが週1回の合計3回分が1週間の講義である。チュートリアルでは練習問題をみんなで解き、答え合わせをするなど授業に即して実践問題を出してくれるのでこれをやっておけば成績評価対象の中間・期末試験は問題ないだろう。
ⅱ. Organizational Behavior 組織行動論
本講義では主に企業経営について経営学と心理学の視点から学ぶ。これもⅰ同様週三回の講義である。特筆すべきはチュートリアルがディスカッションベースでそれも成績評価の対象になるということである。毎回の講義に即して実際の企業の例についてディスカッションを行うのだが、これが非常に大変である。多くの学生がヨーロッパないしアメリカの学生で議論についていくので最初は精一杯である。ディスカッションではなかなか良いところを見せる機会がないので、その分中間レポート・期末試験でどれだけ努力するかが鍵だろう。
ⅲ. Sustainable Development 持続可能開発
SDの講義はオムニバス形式で経済学から生物学まで広い分野の先生を各回ごとに呼び、講義を行う。主にケーススタディを通して持続可能な開発とは何かを学んでいく。この講義でもチュートリアルはディスカッション形式で最初は大変苦労させられることだろう。しかし浅く広くな分、議論には参加しやすいので拙くても発言をする勇気を養うことができたように感じる。
上記3つの講義では最後に期末試験を行うのだが、どれも制限時間2時間半で一斉に問題を解かされる。成績は絶対評価でここで点が取れなかった場合、救済措置もないので非常にシビアである。特にⅱ、ⅲは論述形式なので英文を書くスキルを試される。日頃どれだけ文章に触れ、書いているかが試される。
エジンバラでの生活
① 唯一の問題
イギリスでの生活はインドと比べて非常に過ごしやすいものだった。時間通りに来るバスやイギリス人の親切さなどにはインドの後だったということもあり人並み以上に感動した。しかし一つだけ例外がある、それが料理である。イギリス料理はまずいと有名だが、やはり美味しくはなかった。美味しくないというよりも何を食べても味が似ていて、塩加減も中途半端なのである。しかしそれもレストランを選べば美味しいものも食べられるので特別心配する必要はない。私はホームステイだったので自分で料理をすることが多かったし、友人の話によると寮でも自分で作ることの方が多いようなので調味料さえあれば、(料理が下手でない限り)食事で困ることはほとんどないだろう。ただしイギリスの物価は非常に高い。そのためレストランなどでは一回で3000円近く飛ぶこともままあるので食に関してはなるべく節約しながら生活することをお勧めする。
② 勉強、勉強そして勉強
エジンバラ大は世界トップレベルということもあり、本留学ではやはり勉強が生活の中心になった。もちろんインドでもそうではあったのだが、出される課題の量や難易度の高いテスト、ディスカッションの入念な準備など求められるものが非常に高い。そのため必然的に生活の中心は図書館やカフェといった場所になり、1日の勉強時間が10時間を超えることもざらにあった。しかしそれでもやればやるだけ身につくことも多く、無駄になった勉強は一つもなかった。最も苦労したのは先にもあげたがエッセイである。4000字エッセイなどを期限1週間で課題として出されることもあり、かなりハードだった。エジンバラ大学への留学を志す人にはそれだけの勉強をするという覚悟をする必要がある。
③ 日本語学科の友人たち
エジンバラ大学には日本語学科があり、そのチューターも留学中に行っていた。やはり日本語学科の学生は日本に興味があるだけに彼らとはすぐに打ち解けられ遊ぶ機会も多かった。大学近くには日本のゲームができるバーがあり、授業の後にはよくその友人たちと行ったものである。中でも最も仲良くなった友人はスコットランド出身で小さいころから日本のゲームをやって育ち、そのうちに日本の文化を学びたいと思って日本語を専攻することにしたそうだ。彼は日本人の自分よりも日本に詳しく、話すうち自国の知識の甘さをなんども感じさせられた。留学に行くにあたってまずやるべきことは、英語より何よりも自分の国を改めて知り考え直すことなのかもしれない。
④ パリ同時多発テロ
留学の中盤に差し掛かった2015年11月3日、ヨーロッパを震撼させる事件が起こった。フランスパリ同時多発テロ事件である。奇しくも自身の留学期間はイスラム過激派組織によって内戦が悪化し、中東が大きく揺れている時だった。同時に多くの難民がヨーロッパに押し寄せ、国際社会の脆さが露呈しているまさにそのとき、このテロ事件は起こった。イギリスでもテレビやラジオはどのチャンネルもこの事件を報道し、パリ出身の友人も多くいるエジンバラ大学では追悼式なども開催された。移民やテロ、文化の衝突など様々なconflictを抱える中心となったヨーロッパでこの事件を経験したことは自分の価値観を大きく変える出来事となった。決して日本も他人事ではなく、この問題に取り組んでいかなければならない、自分にできることは一体何なのかと様々なことを考えさせられた。
イギリス留学を終えて
本留学を終えてやはり感じたのはインド、そして日本との大きな違いである。何不自由なく生活できる点は大きくインドと異なる一方で日本とはよく似た性質を持っているし、イギリス人の礼儀を重んじる態度も日本人のそれとよく似ているように感じた。一方でインドとも日本とも大きく異なる点は様々な文化が共存しているという点である。イギリスは歴史的にも多くの植民地を持っていたことから、インド人をはじめとして様々な人種が入り混じって生活している。それゆえ移民や格差といった問題も起きているのだが、こういった状況は日本やインドでは経験することがなかったので非常に自分にとって新鮮なものだった。このように本留学を終えて自分の中で世界をより広く見るための判断軸が一つまた増えたことが何よりもの収穫だといえる。
2段階留学を終えて 〜日本の外から日本を見る〜
学生時代に途上国と先進国に長期間住み、その文化に染まったことはなにものにも代えがたい経験となった。何よりも大きいのは日本という国を客観的に見ることができるようになったということである。留学して初めてそれまで見えなかった日本の良いところ、悪いところが見えてくる。それは1カ国目を終えた時はぼんやりだったものが、2カ国に行って新しい世界を知り、自分の軸が増えることによってはっきりと見えてくるのである。これは2段階留学だからこそできる経験ではないだろうか。加えて良かったことは自分自身と真っ直ぐ向き合えたということである。私は留学を通して最も価値のある時間は自分と向き合う時間だと感じる。留学は決して楽なものではない。文化や価値観の違いに直面し、苦しむことも何度もある。だからこそその中で本当に自分がやりたいことは何なのか、自分にとって大切なものは何なのかと考えさせれるのだ。こういった時間の中で将来のキャリアを自分の中で考えていくことこそ留学の本質だといえるだろう。2段階留学は様々な価値観に触れることが多いことからも、そのチャンスをより多く与えてくれるに違いない。
一方で2カ国行くことのデメリットもある。それはやはり1カ国の滞在が短くなってしまうということである。半年が経ち、やっと留学に慣れて楽しくなってきた頃に離れるのは何とも勿体無いと感じることもあった。当然その後の半年間でも得られるものは大きいだろうし、この点は長期の1カ国留学に劣る部分だと言えよう。また途上国留学の際には現地を熟知した指導教員のバックアップが必要不可欠である。そのため入念な準備と話し合いができない場合は避けたほうが良いかもしれない。
しかしそれでも、冒頭に書いたよう2段階留学のもつ可能性というのは本当に素晴らしいものだと思う。自身も2カ国経験していなければこれからの人生はまったく違うものになっただろうと留学を終えた今改めて感じる。現在留学を考えている人はぜひ自分の視野を広げるチャンスとして2段階留学を検討してみてはいかがだろうか。
最後に改めて本留学を応援し、支えてくださった高井先生とゼミの仲間たち、そして家族には感謝しても仕切れない。留学はスポーツで言えば個人競技ではなく団体競技のようなもので、周りの支えがなければ決して成功することはできないものだ。心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。
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