医療・保険 (編集部 Vol.5)

留学マニュアル

~Manual~医療と保険

ランブル鞭毛虫(インド)・扁桃腺手術(パリ)・予防接種20本 高井 哲彦

海外でのトラブル・病気はダメージ3倍

海外ではトラブル・病気によるダメージが、心身負担に事後処理が加わり、3倍増です。そのため、海外旅行保険はいかに高くとも、渡航日から帰国日まで休暇旅行を含め全期間、必須です。第1に、生活に不慣れなため、トラブル・病気を起こしやすいです。半年以上住めば必ず1回は何かあります。第2に、周囲に家族や長年の友人がいないため、解決手段が限られ、問題が深刻化します。第3に、最悪の体調やパニックでは、語学上級者でも立ち往生します。

保険は当然、だけど万全ではない

・保険の緊急連絡電話・契約番号は携帯電話・メモ等に明記。最悪の状況にこそ必要。
・海外旅行保険は、歯科治療、自動車運転、危険なスポーツ(登山・ダイビング等)は対象外。
・現地大学が義務付ける留学生保険は、盗難、救援者費用、第3国旅行等には無保険*1
・クレジットカードの大半は海外旅行保険が自動付帯しない(とくに無料カードに注意)*2
・死亡補償より治療が重要。救援者費用もいざというときに。携行品損害も意外に使う。

日本で健康診断と歯科治療を済ませる

健康診断は、VISA 取得、大学入学、体調管理のために必須です。加えて、歯科治療は海外旅行保険の対象外なので、技術水準の高い日本で済ませましょう。パリの高級歯科で数万円かけて治療したところ、「どこの途上国で治療しましたか」と技術の差に呆れられました。

予防接種する

予防接種を入国・留学の必須条件とする国は多いです。まず感染病歴・予防接種歴を母子手帳・家族等で確認しましょう。日本脳炎、B型肝炎、HPV等、いまの20歳には縁のなかった定期接種もありますし、破傷風等、子供時代に定期接種済でも20歳頃には効力が切れるものもあります。海外で必要な予防接種の種類は、FORTH(厚労省検疫所)HPと各国大使館・各大学HPで確認して下さい。WHOのHPでは International Certificate of Vaccination用紙をダウンロードできます。

破傷風は、裸足の切り傷からも感染するので、先進国でも勧めます。乳児期と11歳頃に3種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)を打っていても、10年毎に接種する必要があるので、大学生全員に接種を勧めます。
A型肝炎は、学生時代にいつか途上国旅行の可能性があるなら勧めます。食物感染で1ヶ月隔離入院しますが、接種すれば5年も予防率100%です。計3回(1回目を打ち、1ヶ月後に2回目、半年後に3回目)必要なので、渡航が決まったら一刻も早1本目を打ちましょう。ただし、渡航2ヶ月前に2回接種すれば効力が生じるので、3回目は海外接種でも大丈夫です。札幌なら札幌市立病院かさっぽろ内科クリニックで。
黄熱病は、アフリカ・南米の入国条件で、一度打ては一生効力があります。が、月に1-2回しか接種機会がありません。札幌なら小樽検疫所か千歳空港検疫所支所で。海外の大型ハブ空港でも。

薬を持参するか、現地で薬を買うか

最低限の持病薬・常用薬は持参した方が良いでしょう。他方、現地の薬に慣れることも長期滞在の一部です。風邪薬のコンタックや消炎鎮痛剤のアスピリン等は、日本でも海外でも一緒です。日本の製薬会社も実は、世界6大製薬会社のライセンスを使っています。

近所のホームドクターか、日本語の通じる国際病院か

語学中上級者の軽症なら近所のホームドクター、語学初級者または重症・入院なら日本語の通じる国際病院を勧めます。
近所にホームドクターを確保しましょう。学生寮の管理人や近所の薬屋に評判の良い医者を聞きましょう。具合が悪くても歩ける徒歩圏でないと、風邪などの治療には不便です。
他方、初心者や重症ならば、日本語の通じる国際病院に行きましょう。まず保険会社に電話すれば、病院紹介はもちろん、高額治療費のキャッシュレス化やタクシー料金の払戻しも可能です。
手術や入院ならば、帰国や救援者呼び寄せを考えても良いでしょう。国際病院は世界水準の医療技術を持つはずですが、それでも手作業や看護が雑だと感じる日本人もいます。

日常の体調管理

快眠快食と休息を意識的に保ちましょう。体調さえ維持できれば、風邪・下痢等にも抵抗力となります。インドでは大半の人がお腹を壊しますが、同じ人が同じものを食べても、疲れやストレスがないと平気で済んだりします。学生寮・旅先で同室者がいる場合、耳栓が必要なこともあります。
海外では感情・体調の起伏が大きくなる傾向があります。睡眠・食事が減ってきたときは、学内外のメンタルヘルスの専門家に相談しましょう。保険会社に相談すれば、日本語の通じる医者・カウンセラーを紹介してもらえることもあります。

真夏の熱帯地の防寒着

睡眠時の低温と乾燥は風邪の元凶です。飛行機搭乗時には行先・季節によらず、薄手綿入ジャンパーとマスクを機内持込することを強く勧めます。真夏のアジア旅行時に T シャツ・短パン・サンダルで搭乗し、風邪を引いて滞在を台無しにする人が多々います。飛行機内と熱帯地の空港・バス等の空調は、冬並みの低温が多く、夏でも油断できません。

発展途上国での虫除け

虫刺されは、黄熱病、マラリア、日本脳炎、デング熱等、深刻な伝染病の元凶です。熱帯地に蚊取り線香と虫除けスプレーは必須です。暑くても長袖シャツ・長ズボンと併用。
蚊取り線香は、携帯用ホルダーに入れればトイレ等にも持参できます。電動蚊取り器やスプレーなどの代替品もありますが、効果や価格では線香に及ばないでしょう。
虫除けスプレーは、国内市販品ならディート成分12%(ムシペールα等)が最高。海外ならさらに高濃度品も買えます。かゆみ止めは、PVA配合のステロイド外用剤(ムヒアルファEX等)なら南京虫・蜂の痛みにも対応できます。
蚊帳付の宿も多いですが、補修用ガムテープの持参や蚊帳の現地購入も。新型マラリア予防薬(Doxycycline等)は、海外の薬局(乗継空港等)なら日本価格の1/10。南京虫対策はシュラフカバー持参か。
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1. 日本の海外旅行保険に二重加入も選択肢。第3国旅行にはクレジットカード付帯保険。[戻る]
2. 海外旅行保険が自動付帯する推奨カードは Mileage Plus Saison/JAL navi Mastert 等。旅行代金(NICOS、楽天等)や公共交通 (学士会Citi、大学生協Tuo、三井住友VISA、SBI、Yahoo!等)をカード払いしない限り無保険。年会費無料は危険。2015 年時点。[戻る]

 


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