フランス パリ政治学院 交換留学(珍名 新着2017)
パリ政治学院留学体験記
経営学科3年 珍名伸明
留学先
フランス パリ政治学院(Sciences Po, Paris campus)
期間
2017年8月~2017年12月(1セメスター)
三段階留学
第一段階 フランス パリ政治学院 2017年8月~2017年12月
第二段階 台湾 国立台湾大学 2018年2月~7月
第三段階 アメリカ オレゴン大学 2018年9月~12月
志望理由
当初は北欧圏やアメリカなど英語圏、ひいては英語がよく通じる国を志望していたが、先生の勧めによりフランス語圏挑戦を決意。自分には高すぎる挑戦だと当初は思ったが、得られるものの多さから志望した。現在2段階留学の一段階目。
費用
1.航空券:往復16万前後(時期、航空会社による。新千歳発でもあまり変わらない)
2.家賃:580€/月(ホームステイを利用。Ovniという情報サイトで見つけた)
3.食費:人によるが、学食は3.25€からある。その他外食は総じて高価なので注意。
4.保険料:5万(日本の保険)+2万(Securite socialという学生義務保険料。フランスの学生は必ず加入。医療費は3割負担になる。日本の保険無しでもこちらとMutualという追加保険に入れば似たような保証を受けることができるがキャッシュレスサービスや日本語での対応は期待できないのでフランス語に自信のある方にはこちらのみで十分)。
5.オリエンテーション料:2万円ぐらい。セーヌ川クルーズやクラブでのパーティ代も含まれているのでそこそこお得??一週間程度のプログラム。ここでお友達がたくさんできるので行ったほうがよいかも。
6.生活費:いろいろ総計して最低でも月18万は見積もったほうが良い。場合によっては家賃だけで10万円持っていかれる。
一週間のスケジュール
取っていた授業
10027 – Tennis de table, tous niveaux 月曜日
12670 – Economics of the European Union, Lecture火曜日
11140 – FRANCAIS DÉBUTANT (A1) 火曜日
16706 – Intermediate Macroeconomics 水曜日
11140 – FRANCAIS DÉBUTANT (A1) 木曜日
17509 – Economics of the European Union, Seminar金曜日
11668 – Marketing and Customer Relationship Management 金曜日
13098 – Family Economics 水曜日
大まかなスケジュール表
留学スケジュール
留学の動機
そもそもなぜ自分が交換留学を志望しだしたのかについては、最初はただ単に大学入学時に思っていた海外生活への憧れだったり、単純に英語が話せたら楽しそうだなといった極めて俗なものでした。しかし俗ながらも海外に行ってみたいという希望を抱きながら、結局は大学一年生の時は極めて“普通”の代わり映えもしない大学生活を過ごしていました。英語もたいして勉強したことはありませんでした。そんな中教養棟の広告で見たFSPプログラムの参加募集ポスターを見て、とりあえず暇だから行ってみるかと参加してみたのが僕の留学キャリアの始まりでした。このプログラムの正式名称がFSP、すなわちファースト・ステップ・プログラムという海外のことを気軽に知ってもらって次のキャリア選択に役立ててもらおうという趣旨のものだったのですが、結論から申し上げると見事に国際本部の方々の思惑通りの人物になってしましました。ですが僕が次のキャリアに海外留学を積極的に考えるようになった非常に良いプログラムです。最初から長期留学するよりもまず始めにこちらに参加するとよいと思います。僕はその当時FSPのアジアプログラムに参加したので、渡航した国はシンガポールとベトナムでしたが、シンガポールでは僕のそれまでの海外に対する考えをひっくり返す体験をしました。シンガポールではシンガポール国立大学や、Yale NUSというイエール大学のシンガポール分校を訪問したのですが、その校舎の設備の素晴らしいこと、ビビりました。その他学生を見ててもマルチリンガルが当然の雰囲気で経歴を聞いても素晴らしい人ばかりであり、特に学問に対する姿勢の違いを目の当たりにし、「このままだと日本の大学はやばいな」と正直に感じたのが今後の留学を志望することになった一番の源です。
そこから真剣に交換留学への道のりを考え始めたのですが、実は当初はパリ政治学院ではなく、英語圏、またはそれに準ずる国、イギリスやフィンランドへの留学を考えていました。しかしゼミの指導教員であった高井先生からのアドバイスを受け、自分が英語圏や北欧の国を志望する理由がただ単に初めての留学で負担の少なそうな国を選択しているという側面もあったことを指摘され、「子供用プールで泳ぎ続けても大きな成長は得られない」ということをアドバイスされ、フランス留学を決意しました。
留学準備
語学について
語学要件であった英語スコアはIELTSで取得しました。フランス語についても現地でフランス語の授業を履修する際にはB2以上の語学証明が必要ですが、今回自分はそこまでフランス語力があったわけではなかったので、英語の授業と、フランス語の語学授業のみを履修しました。したがって、今回は必須要件である英語の語学スコアの準備方法について説明します。
新渡戸カレッジには所属していたため、スピーキング、ライティングの練習に留学支援英語が活用できるため、そこは非常に助かりましたが、正直週一回程度の機会では特にスピーキング能力を高めるのに不十分だと思います。国際交流科目やオンライン英会話などを活用することをお薦めします。特に昨今のオンライン英会話サービスはとても優秀です。自分もDMM英会話を毎日続けることでスコアを伸ばすことに成功しました。
VISA
ビザについては留学が決定し次第なるべく早く取得計画を立てておくべきです。日本でのフランスビザ申請は東京のフランス大使館のみが受け入れており、シーズンになると一か月先まで予約がいっぱいなんてこともザラです。またビザ取得の予約を行う前にもキャンパスフランスというサイトで留学生登録を行い、申請料金を振り込まなければならないなど非常に準備が多岐にわたります。最低でも出発の2か月前には動き始めなければ間に合いません。気をつけてください。
航空券
パリ行きの航空券については、成田を経由しなくても新千歳から香港などアジアのハブ空港を経由することで乗り換えが少なく便利な便が多数就航しております。価格も早めにとれば日系より抑えられるので、日系航空会社にこだわりがなければ活用すると非常に便利です。
住居!
パリに留学するにあたって一番気をつけなければならないのは住居です。部屋はなかなか空いてないわ家賃は高いわ狭いわでもうボロボロです。。。入国前に住居のアポを取っておくことをお薦めしますが、実際見てからでないと住居決定はリスクが高いです。お湯がでないとか蛇口が壊れているなどはパリでは日常茶飯事です。あまり安すぎるのには大抵理由があるので注意することと、高くても良い物件だとは限らないです。慎重に選ぶことを勧めます。
履修登録 ※重要!!
パリ政治学院では、授業開始のひと月以上前から履修登録が始まり、オンラインシステムでの登録が始まります。これが周囲の学生からも物議を生んでいるところなのですが、履修が抽選でなく、まさかの早い者勝ちとなってしまっております。なので履修登録開始時間には回線の早い場所でパソコンの前にへばりついてF5を構えて待っていてください(笑)。これが本当に重要で、ほとんどの授業の登録は最初の5分で決着がついてしまいます。しかし、開始10分後程度までは他の学生たちも迷って履修授業を変更したりするのでまたF5を押しながら動向を見ていると取りたい授業に空席ができたりします。隙を逃さず素早く登録しましょう。
授業
1. Economics of the European Union
一番クオリティが高く、非常にためになった授業です。パリ政治学院という国際関係学に強い学校の特性を生かした授業でとても人気でした。週二回開講され、一つはレクチャーの授業で日本の授業と同形式、もう一つはセミナーで、学生のプレゼンが主体で授業が進んでいきます。内容としては、EUの統合史から運営方針、また具体的に様々な域内政策を経済学的に評価し、セミナーにて各学生が関連した論点での議論を深めるといった内容でした。セミナーでは一人につき最低でも2回以上はプレゼンが割り当てられ、プレゼンの内容も割り当てられた5本程度の論文について内容をわかりやすくまとめるものや、1本の論文について論者の意見の要約と自己の批判を加えるものの2種類あり、それぞれ各自に割り当てられます。内容も履修していて非常にためになる授業でした。
2. Intermediate Macroeconomics
中級マクロ経済の授業です。中級と書いてあるとおり、基本的なマクロ経済の知識は既に持っていることが要求されます。授業難易度的には履修授業の中で一番高かったと思います。グループワークもあり、実際のGDPなどの国別指標から景気のカーブを観測したり、恐慌の影響がまずどんな数値に影響を与え、その後他の数値に波及していくのかなどを理論的に説明することが求められました。
3. Marketing and customer relationship Management
マーケティングの授業でした。現役のIBM Franceの社員が講師を担当し、各マーケティングの概念を説明し、各社のケースに応用していきます。この授業ではなんと学生に実際に企業のマーケティング部署で働いた経験のある人材を自力で探してきてインタビューを各自グループで行ってもらうという課題があり、困難を極めた時がありました。最終的に同じグループのフランス人のつてを使ってなんとかはなったものの、結局グループで足手まといにしかなれなかった感じがするのが悲しかったです。
4. Family Economics
婚姻、離婚や家族形態の変化を経済学的に解明する授業です。具体的には女性の社会地位向上が婚姻市場に与えた影響などを解明します。授業の内容はわかりやすかったものの、試験や課題の難易度は高く、意外に苦戦した授業でした。
5. FRANCAIS DÉBUTANT (A1)
初級フランス語の授業です。日本の授業で言うと外国語演習のような雰囲気で文法事項よりも実践的会話を勉強する授業でした。
6. Tennis de table, tous niveaux
スポーツ授業で卓球を選択しました。レクリエーションのような感覚で先生も学生も気軽にプレイしているのが印象的でした。英語の授業はなかったのでフランス語で指導、会話が行われていました。一方で先生の言ったことがわからないときは同じ授業をとっていた友達が英語で教えてくれたりしてくれたので非常に助かりました。
パリ生活
シャルルドゴール空港について
パリに来るとなれば大抵の人が避けて通れないのがパリCDG(シャルルドゴール)空港でしょう。パリが初めてなら一番最初に迷うのがSIMカードの入手です。SIMフリーの携帯をもっているなら空港内にあるRELAY(コンビニみたいなやつ)でまず購入し、近くのマックに駆け込んでFree Wi-Fiを利用してアクティベートするのが賢明です。フランスのSIMは買った後もなぜか設定にWi-Fi環境が必要なため、まずネットにつながるところを探さないといけません。パリのWi-Fi事情についてはマック、スタバはどこでも快適につながって優秀なのですが他はあまり期待できません。ネットがないと大抵最初は道に迷います。
また空港から市内への移動についてですが、RERという電車の利用は治安上の懸念からお勧めできません。ネットで検索するといくらでも情報が出てくるのですが、パリの交通機関で一番治安が悪いといわれるのがパリ―CDG空港間の電車路線です。代替手段として市内まで直通で行けるロワシーバスというものだったりエールフランスバスが多数運航しております。価格も比較的電車と大差ないので身の安全を考えるならはじめはこちらで移動しておいたほうが良いかもしれません。
パリ市内の交通機関について
基本的にメトロ(地下鉄)が縦横無尽にはりめぐらされているので、基本はメトロだけで事は足ります。あとはバスもGoogle mapなどで経路検索すれば路線を出してくれるのでこちらも使うと便利です。料金については一回の乗車はメトロとバス共通のチケットで支払い、バラで一枚買うと1.9€ほどです。10枚セットを買うと14.5€ぐらいになって割引があります。慣れてくるとNavigoというSuicaのようなカードを購入して乗るのが便利です。こちらは期間単位の販売でその期間はメトロなど交通機関が乗り放題となる仕組みです。学生で一年以上滞在するとなると学生年間パスが350€程度で販売されているはずなので申し込むとお得にメトロを利用できます。
空港からのロワシーバスの当着地であるオペラ座。いきなりパリ感出まくってて興奮するけどスリに注意。周囲には地下鉄Opéra駅があって移動に便利。
銀行について
学校が始まると、SciencesPoの中には銀行の担当者などがブースを構えていて口座開設を宣伝してたりします。中には100€プレゼントといったものもありますが、大抵外国人がフランスで銀行を開設するとなると500€ぐらいのデポジットが必要だったり、必要な資料がやけに多いなどといったことがあります。しかし、CAF(住宅補助)を受け取る予定の人は必須なのでできるだけ早めに開設するといいと思います。
ご飯
基本的にはパリ市内に複数設置されている学生支援組織Crous運営の学食レストランに通っていました。学生証を見せると一食3.25€からスタートし、デザートも野菜もあるため非常に助かりました。しかし周囲の学生がお昼時になるとこぞって近くのCrousに向かうため非常に込み合います。学校内にはバケットサンドイッチやクロワッサンなどを販売するカフェがあり、時間がないときはそちらを利用してました。土日は学食が開いてないので基本的に自炊していました。フランスは食材が安く、パスタやキッシュ、ガレットなどの簡単な料理ならすぐ出来て食費も浮くのでこの機会にいろいろ料理に挑戦してみると節約とともに一石二鳥です。
交友関係
フランス人だったり、ヨーロッパの人たちはいつもパーティ好きなので、毎週どころではなく3日に一回程度は飲みに行ってたりします。初めのころにWelcome Programで出会ったイタリア人とフィリピン人の同じExchange student同士で仲良くなったのですが、彼らがなかなかの遊び人で、毎週のように飲みだったり、クラブの誘いがあったりしました。さすがに毎回誘いについて行っては勉強ままならないので頻度は少なめにしたつもりですが、パリ生活で友達を作るなら一番は遊びに行くことだと痛感しました。基本的に彼らは授業では真面目なのでなかなか授業で仲良くなろうとしても難しかったです。一方でパーティになると全く言葉を交わしたことがなかったクラスメイトなどからもフレンドリーに声をかけてくれたりするので非常に人間関係を広げるのに役立ちました。またSciencesPoには日本人会が存在したりRamen-toiという日本・韓国文化サークルがあったりして日本人はもちろん日本に興味のあるフランス人とも非常に仲良くなることができます。
娯楽
週末や授業の空きコマで暇な時間があったら、よくカフェや美術館に行っていました。パリでは学生はルーブル美術館やオルセー美術館などの有名な美術館の入場は無料で、非常に多彩な美術館があったため、行き飽きることはないでしょう。また有名なパリのオペラは当日券で早朝から並んで手に入れると10€程度で観ることができるのでとてもお得です。こちらは学生でなくても安価で観ることができるのでパリに行く方には非常におすすめです。
まとめ
多段階留学について
現在自分は2段階目である台湾の国立台湾大学に留学中ですが、留学を開始して間もない現在でもフランスとの差を実感しております。多段階の留学をするメリットとして私が考えるのは、留学生活がマンネリ化しづらいこともありますが、一番は各国を相対化して考えることができることだと考えています。どの国の文化や教育の形にも絶対の正解はなく、それぞれのメリット・デメリットが存在すると思います。その中で複数国に留学することは留学国の価値観を相対化でき、単純な日本のみとの比較にとらわれないため大きな利点があると思います。しかし、指導教員の先生や国際本部の方々に負担をかけてしまうこと、また費用がかさんでしまうことは考慮しなければならないでしょう。
パリ政治学院での生活を振り返って
振り返ってみると、パリ政治学院の生活は自分にとって困難ばかりでした。私にとっては初めての長期留学先で、なおかつ自分の語学力も足りなく、授業のグループワークではほかの学生に迷惑ばかりをかけていたように思います。パリ政治学院に来ているほかの学生は基本的に世界の名だたる学校の出身者ばかりで自分が見劣りしたこともあったでしょう。しかし、だからといって自分がここを選んだことを後悔はしていません。最初の動機にも合った通り、「子供用プールで泳ぎ続けても大きな成長は得られない」との言葉通り、留学を終えて自分が成長していることを実感しています。具体的には、語学はもちろんのこと、度重なるプレゼンの経験から人前で話す度胸がつきましたし、グループで議論する際の発言の大切さを学びました。また出会ったたくさんの人から様々な価値観を学ぶことができたように思えます。深夜までエッセイを書き続けたことも今では良い思い出です。あえて険しい道をといってパリ政治学院を推薦してくださった高井先生には感謝申し上げます。
この私が自慢口調で書いたくだらない体験記が今後こちらの大学への交換留学、また正規での留学を目指す方々への助けとなればとても幸いです。ありがとうございました。