ヒントとしての旅の技術 (編集部 Vol.5)

留学マニュアル

~Column~ヒントとしての旅の技術

Trans Japan 編集部

旅は留学とは目的も時間配分も違います。*1 旅人は、学習成果より異文化体験を優先し、単位も
義務も望まず、お客さんとして周遊します。しかし、以下の技術は留学でも必要な基本でしょう。

ガイドブックではまず習慣・タブー・トラブル例を熟読する。

勘を研ぎ澄ます。写真撮影で逮捕もある。ATM や電源プラグ、チップも要確認。

挨拶・質問・数(金額)は、現地語を丸暗記する。

現地語は最良の交渉・安全策。英語を話せる人・国に対しても最低限の礼儀。留学なら当然。1泊の通過でも。

観光地や繁華街で近づいてくる人は全員「悪い人」。

流暢な英語で「日本人は友達」云々と話しかけるのは外国人詐欺商売の典型。客引きに囲まれたら店に逃げ込む。非観光地ですれ違う人に自分から現地語で話しかけるべし。

庶民の公共交通機関――とくに市内バスと鉄道を使いこなす。

現地語を試し、車窓や人々を観察し、小銭感覚に慣れる。タクシーは使わない。

ドミトリーや学生寮の生活水準に慣れる。

トイレ・シャワーは共同が基本。YMCA・YWCA・YH は先進国でも途上国でも定評がある。ただし、米国大都市や途上国では安全を金で買う必要もある。

地元の人で混み合う人気食堂や学食で食べる。

ガイドブック掲載の観光店は信用できない。市場周辺は優良店が多い。隣に座る人と同じ皿を注文してみる。体調に不安があれば無理しない。途上国なら予防接種も。

交渉は、力勝負ではなく、コミュニケーション。

交渉は時間を割いて笑顔で楽しむ。急いて怒るのは野暮。タクシー等の料金は事前に決めて事後に払う。買物の値引きは「負けろ」と 1 ヶ所で粘るのは逆効果。関心を隠して価格を聞き、半額以下を現地語で逆提案した後、「じゃあいらない」と本気で立ち去る。去り際に「ちょっと待った!」と引き止められて初めて交渉。最低 3 ヶ所を回り、相場を探る。

日本での習慣・尺度で考えない。文句を言う前に自分自身を変える。

学食・庶民の定番メニューは苦手なものこそ何度も食べる。途上国では冷水シャワーや水と手を使う公衆トイレに心身を慣らす。一人旅はグループ旅行とは体験の次元が違う。

やりたいことは優先順位をつける。必要時間を逆算する。

早め早めに先手を打つ。安易に諦めない。時間切れにしない。名所観光とは別に、自分なりのテーマを持つ。事前に紀行文・サブカル本・関連書を読むことが決定的に重要。

トラブルや変更を楽しむ余裕を持つ。

予想外の展開にイライラしない。事前準備と安全連絡が前提だが、現地での発見も大切。

見る

・ 市場を歩き、肉屋、魚屋、野菜・果物屋、加工食品等、品揃えを観察する。
– 肉屋は、宗教・生死観や貧富差・食生活が凝縮する。
・ デパートとスーパーマーケットで品揃えと価格帯を見る。
– ペットフードの品揃えと価格帯は途上国の生活水準を測る目安になる。
・ 街角の教会・寺院に入ってみる。
– 売店の宗教小物は珍しく安い(尊敬と礼節を前提に)。
・ 中華街の街ごとの違いを見て回り、中華料理を食べる。
– 中華門の寄贈者・寄贈年、中華会館の出身は支配層の変遷と構造を示す。
・ 専門的な博物館を探す。
– 売店のミュージアムグッズは、趣味が良く安い。
・ 現地の政治・経済・社会に関する本を読んでおく。
– ロンドン・パリ・NY 等の大都市ならば移民地区や同性愛者等の解説地図。
・ 職人街を歩き、工房をのぞいてみる。実際に何かをオーダーしてみる。
・ 動物園、ゴミ処理場、戦争記念館など、安全かつテーマのある見学を試みる。
・ 早起きして早朝に散歩してみる。
・ 一度は大都市・観光地を出て、古い田舎町に泊まり、生活を体感してみる。
・ 同じ道を繰り返さず、毎回寄り道をする。あえて迷子になってみる。

食べる

・ 滞在中に食べるつもりの庶民食・駄菓子の現地語名を、ガイドブックで暗記する。
・ 繁華街の大衆食堂・カフェで街と人を体感する。便意がなくてもトイレを試す。
・ 屋台飯を見かける度に片端から食べてみる。客の絶えない市場内の屋台は比較的安心。
・ 大衆食堂で隣の人が食べているものを頼む。笑顔で目を合せ、食べ方を教えてもらう。
・ 立ち食いの軽食を片手に庶民街を歩く。飲食すると外国人を警戒する視線が緩む。
・ ケーキ屋・菓子屋やスーパーで独自なスイーツを買って食べる。
・ 同じ料理店・皿を繰り返さず、新たなリスクに挑戦する。マクドナルドに逃げない。・ パリの超高級有名店も、昼食メニューを安グラスワインだけで食べれば、手が届く。
・ 現地に関するグルメエッセイや食べ歩き本を読んでおくと、食べる楽しみが増える。

体験する

・ 最も安い庶民の交通手段、とくに市内バスを乗りこなす。
・ 年に 1 回の祭りや週に 1 回の市場は事前に調べて、訪問時期を合わせる。
・ 地元の老舗大学を訪ね、学生食堂で食べ、図書館を覗く。
・ 自分の部活動や趣味と同じ活動をしている団体の現地拠点を訪問見学してみる。
・ 伝統的な公衆便所を現地の作法で使ってみる。トイレに慣れると、腹が据わる。
・ 床屋で髪を切ったり、靴を修理する。床屋職人と靴職人は職業水準・意識の好指標。
・ 公衆浴場、銭湯、温泉、プールに行く。
・ コンサートやスポーツ試合の切符を買う。オペラにも格安の学生券がある。
・ 郵便局を見つけたら、絵葉書の日本宛の切手を買う。小包を日本へ送り、少しでも身軽になる。
・ 水着・運動靴を持参し、水泳・ジョッギング・サイクリング等のスポーツをしてみる。
・ 体験型の現地ツアーを探し、体験学習をしてみる
– 料理、陶芸、田舎・家庭訪問、着付・化粧・エステ、少数民族、お稽古、音楽・美術実技、ダンス、武道、動物、建物、歴史、鉄道、趣味・専門関心。
・ 大企業の工場を探し、見学を申し込んでみる。
・ 語学学校を探し、旅行の冒頭で現地語会話を学ぶ
– 途上国には、1 日や数日でも入学可能なワンツーマン式の学校がある。
– 中南米、インド、東アフリカ、中東、スラブ諸国の長期旅行ではとくに有効。
・ NGO を探し、ボランティアを申し込んでみる。
– インドのマザー・テレサの家(コルコタ)やオーロヴィルなら現地参加可能。
・ 医療先進地なら、髄膜炎・腸チフス等の予防接種をする。マラリヤ薬も日本より安い。
・ 一眼レフや三脚を持参し、現地でしか撮れないシャッターチャンスを捉える。
・ 短波ラジオを持参し、受信報告書を書いて、レアなべリカードを取得する。

買う

・ 観光客を想定しない地元の店で、現地語だけで買い物する。
・ 買い物の前に、せめて数字(金額)と慣用句は現地語を暗記する。

・ 地元の雑誌屋でマニアックな趣味雑誌を買う。空港での最後の土産にもなる。
・ 地元の CD 屋で現地音楽の CD を、古典・定番と最新作・異端を店員に聞いて買う。
・ 地元の本屋で写真集や絵本・マンガ・児童書、歴史書を買う。
・ 地元のスーパーで菓子や嗜好品を土産用に買う。スパイスや茶は軽い。
・ 地元の薬屋で世界的な定番薬品・化粧品を買う。タイガーバーム、サプリ、喉飴等。
・ 地元の服屋・鞄屋・小物屋で、日常生活で毎日使える実用服・実用品を買う。
・ 地元のアンティーク屋や中古本屋で安い掘出物を探してみる。
・ 名前入りや自分サイズのものを地元の店でオーダーする。判子、名札、服。
・ 誕生日・結婚・出産祝いに使える高級カードを、地元の文房具店・印刷屋で買う。
『地球の歩き方』を卒業する*2
ガイドブック通りに神社仏閣・教会史跡を見て回っても、テレビで見る風景を確認するだけで、数年後には忘れてしまうでしょう。嘘だと思ったら、国内外を問わず過去の観光旅行をひとつ選び、何をどれくらい具体的に語れるか、思い出してみて下さい。あれほど感動したはずの記憶がいまや茫洋としていませんか?
逆に、観光ルートを外れた出会いや予定外のトラブル、自分だけの試行錯誤こそが、思い出に残っているのではないでしょうか。以上は、費用も時間もかけずに実現でできますし、危険を冒す必要もありません。留学や長期滞在でも、応用できます。

*1 編集部注:交換留学は単位取得が目的。旅行は目的外で、出国から帰国まで休暇中も、事前報告が義務。交換留学中に無断で大旅行するのは、信義を裏切る不正行為。大旅行がしたいならば休学するのが筋で、大学制度をアリバイに利用する自己中心主義は皆に迷惑。[戻る]

*2 『地球の歩き方』は、20 歳代初心者を想定し、写真・地図・印象論が特徴。歴史・文化・社会解説(浅い)、客観性(読者投稿に依存)、非観光地(観光ルートを外れると無力)、飲食店(掲載店は名店ではない)、長期滞在には弱い。背景解説は明石書店『エリア・スタディーズ』、会話は『旅の指さし会話帳』、非観光地は『Lonely Planet Guide』、飲食店は現地語ガイドを推奨。米国の『便利帳』シリーズ等、長期滞在マニュアルもある。[戻る]


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