危機管理 (鷺谷 Vol.5)
~Manual~危機管理
インド放浪 鷺谷 彰宏 (2015年度)
はじめに
私は留学をしていません。したがって、この文章が留学を予定している皆様のお役にたてるかどうかはわかりません。しかし、執筆を頼まれた以上、これまでの私の国内自転車旅行やインド旅行経験、知人の旅行談や留学体験談を参考に、海外留学先での危険につい
て特に気を付けるべきことを3点、事例を交えながら皆に説明していきますね。
① 知らない人についていかない
自転車旅行中、何人もの親切な方と出会いましたが、「家においで」と言った方は例外なく変態でした。陸路で日本からインドを目指すと旅立った友人の H 君は、タイで自称(首都をシドニーと言う)オーストラリア人に付いて行き睡眠薬強盗に会い、パスポートも含めて持ち物を一切合財盗まれてしまいました。うまい話に乗せられ、トランプ詐欺にあった友人もいます。
このように、国内・国外問わず、やけに友好的にこちらに近づいてくる人には十分に警戒をする必要があります。しかし、せっかくの留学であり、旅行です。警戒ばかりして誰とも話さないことが楽しいはずありません。ではどうすればいいのか。こちらから現地語で話しかけましょう。面白がってくれて仲良くなれたりするかもしれませんよ。
②薬物はダメ。
インドの町を歩いていると、1日に何度も「ハッパー、チョコー、エルー」という言葉をかけられます。何のことだかわからないそこのあなた。違法薬物の俗称とだけ覚えておいてください。売人である彼らはアグレッシブです。路上だけでなく、信号待ちをしているタクシーの中にいても薬物を売りつけようとしてきます。
先進国でもアメリカの 40%を筆頭に、日本の何十倍もの違法薬物経験率です。皆さんが留学中にも、もしかしたら留学先で出会った友人が違法薬物常用者で、あなたにも薬物の使用を促してくることがあるかもしれません。
しかし、絶対に断りましょう。違法薬物の使用は罪に問われますし、皆さんの未来を担う頭脳に生理的汚点を残す危険もあります。
③連絡はまめに
インド旅行終了前日。インドも大したことねーな、と調子に乗っていた私は既に何日も日本への連絡を怠っていました。早朝、インドの首都ニューデリーに到着し、ホテルへ。今日は観光バスでニューデリー市内を観光しようと思い、一眠りしているうちに、気付けば昼過ぎに。観光バスでの観光を諦め、テレビを見ているとニューデリーで観光バスが銃撃され、台湾人観光客が重傷を負ったというニュースが流れているではありませんか!
もし、私が寝過ごさずに観光バスに乗っていたらと思うとゾッとしました。何があるかわからない海外の恐怖を帰国前日に再確認することとなりました。
あなたがテロ・事故・重病に合った時は、最終的に誰かが救済に来ざるをえません。日本の家族や友人・恋人、大学の指導教員・留学担当職員など、渡航にあたり一番世話になった大切な人たちに、最大の迷惑をかけます 。その前に、自分が今どこにいて、どのような状況なのか、日本に伝えておきましょう。facebookなどのSNSやskypeなどを使用して連絡をこまめにとるようにしましょう。
終わりに
これから海外留学を検討している皆さんへ海外での危険について説明してきました。読み返してみたら、全く大したことを言っていないことに気づきました。なので、皆さんが実際に留学をする時には、外務省での海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/)や留学先の大学のセキュリティーに関する HP、留学先国について書かれた書籍などを参考にし、できれば実際にその大学に留学していた先輩ともコンタクトを取り、十分に現地の情報を得ておいてください。
最後に留学中や旅行中に武勇伝を作りたい!
帰国した時に友達に面白おかしく話せる体験をしたい!
若いんだから無茶苦茶しても大丈夫っしょ!
こういった皆さんの気持ちはとてもよくわかります。しかし、海外での危険は、トラブルに合うか否かの確率論ではありません。「次の一手」を打つ救済策や柔軟性がなく、一人では打つ手のない袋小路に追い込まれることが怖いのです。小さなトラブルが出口のない底なし沼になりかねません。自分は大丈夫だとタカをくくらずに、どんなに楽しそうなことでも危険を感じたらやめておいてください。無事に帰国して、留学を楽しい思い出にできることを願っています。
指導教員が証言する留学トラブルの兆候の 4 パターン
① 渡航前から準備不足。社会認識が甘い。家族・教員は放任。
② 学期開始時の履修状況、学期後の出席証明書・成績証明書を教員に報告する義務を怠る。
③ 渡航、週末・休暇旅行、帰国等の宿泊旅行を指導教員・大学・家族に報告する義務を怠る。
④ Email 連絡が途絶える。Facebook/ブログを隠す。一時帰国や Skype/電話面接を避ける。
⑤ 対策: 音信不通は問題の元凶(「便りのないのは良い便り」は真逆)。単位取消・譴責処分等、不祥事対応が必要。小さな例外を見逃すことが大きな事故に発展する(割れ窓の理論)。
編集部注:①交換留学の宿泊旅行は大学に事前報告の義務(各自署名で誓約書提出済)。② 車の運転や登山等は海外旅行保険の対象外。③外務省が危険情報を発令する国・地域にわざわざ立ち入るのは社会の迷惑。④「スラム見物」は危険以前に無礼。途上国=都市貧困も勉強不足。④交換留学は出国から帰国まで。留学 1 年後の半可通や学期終了後の記念旅行が一番危ない。