スウェーデン ウメオ大学 交換留学 (谷端 新着2016)

ヨーロッパ

北海道大学経済学部経営学科三年
谷端菜生

留学を決意するまで

私が留学に興味を持ち始めたのは、2年生の後期。次の年から所属するゼミの先生に卒業を延期せずに留学するチャンスがあることを教えていただいたことがきっかけでした。入学後計画的に留学準備を進める学生がいる中で、私の留学は今振り返ると出発まで本当にドタバタしっぱなしでした。
大学に入学するまで海外に行ったことのなかった私は、大学1年時には部活に所属していたこともあって留学をしたいという気持ちは全くありませんでした。英語を勉強することは確かに好きでしたが、英会話など実用的な英語は全くダメで、留学はしないだろうなと思っていました。しかしそんな私の留学に対する意欲は、まさに申し込みの締め切り直前(2015年の年末)に徐々に高まっていきました。ちょうどこの時期は3年生から所属するゼミが決まる頃でした。私が所属しているゼミは留学を積極的に進めているゼミで、先生と少しだけお話しする機会があったときに、力試しに受けたTOEICのスコアが留学条件に達していることや3年生後期での留学がまだ間に合うことを教えていただきました。留学は出来ればしたいなぐらいにしか思っていなかった私にとって、この情報はとても衝撃的で、チャンスがあるなら挑戦したいと強く思うようになりました。
まずは両親に先生から教えていただいた情報を軽く説明すると、ありがたいことにちゃんと調べて本当にできそうなら挑戦してみたらと言ってもらえました。思いがけないチャンスが巡ってきてその時はやる気に満ちていたのですが、本当に大変なのはここからでした。
計画的に留学を進めていたわけではなかった私は、留学しようと決めたものの何から手を付けたらよいのか全く分からない状態でした。留学先、留学の目的、現地の情報、留学までに必要な準備や費用もなんの知識もないところからのスタートでした。いざ手を付けだしてみると、自分が想像していたものよりはるかに準備が大変で毎日、国際本部と教務を行き来し、ゼミの先生や留学経験のある先輩にお話を聞いたりして忙しく過ごしていました。志望理由書を提出し、国際本部での面接を経て、正式にウメオ大学への留学を認めてもらってからもビザの申請や、留学先での授業の選択など手間のかかることがたくさんあって、本当にスウェーデンにたどり着くのだろうかと思うこともありました。特に出発直前は、あまりにドタバタしていてある科目で期末試験の時間を間違えてしまって受験できなかったり、暑さと疲れで体調を崩し出発の二日前に点滴を打ってもらうなどのトラブルがありました。

期間

2016年8月下旬~2017年1月下旬

スウェーデン・ウメオ大学について

ウメオ大学を選んだ理由

スウェーデンのウメオ大学を留学先に選んだ理由はいくつかあります。スウェーデン人はネイティブではないが英語を話すのが上手なことで知られていて、ほとんどの場所で英語が通用することもあり、留学の目的の一つであった英語力の向上に適した留学先だと考えました。またウメオ大学はヨーロッパの大学の中で留学生満足度No.1を獲得しており、留学生に人気の大学だと聞いていたので、留学経験のない私でも安心して留学生活を送ることができるのではないかと思い志望を決めました。また同じゼミにウメオ大学に留学経験のある先輩がいて、現地の事情について事前に色々と教えていただくこともできました。
ウメオ大学を留学先として選ぶときに唯一心配したのは、気候です。ウメオはその場でオーロラが見えるくらい寒い地域で、11月くらいからどんどん日が短くなり日照時間が3,4時間程度しかありません。もちろん今までそんな気候を経験したことがなく、多くの人がうつになると聞いていたので初めは躊躇しましたが、たった2カ月くらいのことだし、人生で一回くらいそういうところで生活してみるのもいい経験になるだろうと割り切ってウメオ大学を留学先として選びました。

到着直後

現地に到着したのが8月の後半で、もうスウェーデンでは夏終盤だったのですが、毎日天気が良く本当に街並みがきれいだったのを覚えています。ウメオはスウェーデンの北部では大きめの町に分類されるのですが、スウェーデンに行く前私は、近くのお店まで車で何十分もかかるようなものすごい田舎を想像していたので意外になんでもそろっていることをしって少し安心していました。
私が住んでいたところは、学生向けのアパートでキッチンと洗濯機だけ共同という形のお部屋でした。部屋はかなり広めの1人部屋で、キッチンも必要なものは何でもそろっていて特に不便をすることなく生活できました。
同じフロアに住んでいる人たちは本当に親切で仲が良く、いつも顔を合わせては一緒に食事をしたり、お茶を飲んだりして和やかに過ごしていました。留学当初、まともに会話もできない私も輪の中に入れてくれ、困ったことがあればいつでも助けてくれて本当にありがたかったなと思っています。同じフロアに住む人がどんな人かは意外に重要で、場所によっては人間関係がすごく悪かったり、パーティ三昧で毎晩うるさいキッチンもあったので、本当に運がよかったと思います。
留学生満足度トップの大学だけあって、大学側からの留学生へのサポートは手厚かったと思います。ウメオ大学の学生が運営しているBuddy Groupというものに加入していたのですが、オリエンテーション後、ものすごい頻度で楽しいイベントが企画されていてそこで友達をどんどん作っていくという環境が整っていました。私も初めは友達ができるかなと心配していたのですが、全く問題なかったです。

留学先での授業

留学中に履修していた授業は、International Business Environment, Marketing, International Economic Historyの3つです。スウェーデンでの大学の授業の進め方は少し特徴的で、複数の科目を同時進行的に学習していく日本の大学と違って、スウェーデンでは一定期間である特定の科目だけを勉強するいうものでした。初めは少し驚きましたが、一つの科目にだけ集中して勉強できるのは大きなメリットだなと思いました。
授業内容については深く触れませんが、どの授業にも共通していたことは、先生と学生の距離がものすごく近いということです。授業に関する疑問点や学習に関する相談などはどの先生も大歓迎で、学生がリラックスして学習できる環境が整っているなと感じました。
また、北大で今まで受けていた授業と違って、グループワークやプレゼンをする機会が圧倒的に多かったです。日本でそういう経験をしてこなかった私にとってこの時間は留学中最も苦痛な時間で、正直1人でやった方が効率がいいんじゃないかと思うことも何度もありましたが、これも大事な勉強なんだろうと思って耐えていました。
私が1番好きだった授業は、最後に履修したInternational Economic Historyでした。この授業は、1クラス10人程度の少人数制で、3時間の講義が週2,3回あるゼミ形式のクラスでした。前の二つの授業は、大きな教室で行われるレクチャー形式のクラスで、北大で受けていた授業形式とそんなに変わらなかったので、最後の授業はとても新鮮でした。教科書の分量も増え、難易度も前の2つのクラスと比べると少し高かったですが、世界の経済を歴史的な観点から追っていくこの授業は自分の興味と合っていて毎回楽しんで講義を受けていました。

私生活

留学中は、授業ももちろんですが私生活もとても充実していました。ウメオは娯楽がそんなに多くない地域なので、自宅で食事会やパーティを開くというのが学生の遊びの定番でした。私は、同じキッチンを使っているご近所の人たちと一緒に過ごすのがとても好きだったので、周りの留学生に比べると友達は少ないほうだったと思います。大勢で盛り上がるより、のんびりお話をするほうが好きで本当にのほほんとマイペースに過ごしていました。11月ぐらいから新たなコミュニティを見つけて新しい友達に出会う機会が増えたのですが、それまで本当に限られた人としか関わってなかったので、その度に「日本人の留学生もう1人いたんだ!知らなかった!」と言われていました。
あまり交友関係は広くなかった私ですが、できるだけいろんな国の人と交流してそれぞれ違う価値観や考え方を学びたいなと留学前からずっと思っていたので、お互い共通点がたくさんあって話がしやすいアジア人だけでなくヨーロッパ人とも積極的に関わろうとしていました。しかし想像以上に、多くの留学生が同じ国籍どうしで固まっていて多種多様な出身地の友達を作るというのはなかなかに難しかったです。
そういう光景を初めて見たとき私は、せっかく留学に来ているんだから普段関わる機会の少ない人たちと友達になればいいのに、どうして同じ国籍同士で固まって母国語で話したがるんだろうとずっと疑問に思っていました。しかし、自分がよく知らない国の人たちと会話をするのがいかに難しいかということを実感していくにつれて文化や価値観をあらかじめ共有できているのはとても大事なことなんだなと思うようになりました。
これは他の日本人留学生も言っていたのですが、ヨーロッパやアフリカなど日本から遠く離れた人と話すときに何を話していいか本当にわからなかったです。この状況に陥るたびに、自分がいかに知識不足であったかを知り、留学前にもっと他国のことを勉強しておけばよかったと思っていました。
このような難しさはあったものの、仲良くなれた友達と政治や経済といった真面目な話から日常生活の些細なことまで話し合えたことは本当に貴重な経験だったと思います。私の英語のレベルでできる話なんて極々限られたもので、そこまで込み入った話は出来てなかったと思いますが、それでも友達の意見を聞いたり価値観を共有することは本当に興味深く、刺激を受けることが多かったです。

留学期間中の旅行

留学中、週末やクリスマス休暇を利用して旅行に行くこともできました。11月にはヘルシンキ、12月にはウィーンとミュンヘンを観光してきました。ウメオは本当に小さな町だったのでたまに行く旅行がいい気分転換になりました。特にクリスマスシーズンのヨーロッパに行くことは昔からずっと憧れていたので、すごくいい思い出になりました。
1人で観光することが多かったのですが、特に大きなトラブルはありませんでした。ただ、ウィーンからミュンヘンに移動する2日前にベルリンのクリスマスマーケットでテロが起きてしまって、旅行を続けることに少し不安がありましたが、今更ホテルや飛行機を変更するのも面倒だったので予定通りミュンヘンに行きました。さすがにクリスマスマーケットなど人通りの多いところにいる間は、少し緊張していましたが、本当に何もなくてよかったです。

留学中に困ったこと

出発前に心配していたことはたくさんありましたが、実際に現地で困ったことはほとんどありませんでした。札幌より寒い気温や、日照時間の短さといった気候に適応できるかどうかと、水が肌や髪に合うかどうかが出発前の大きな心配でした。
ヨーロッパの水は日本の軟水と違って硬水で、日本人の肌や髪は傷みやすいと聞いたことがあったので、出発前にはそれに対応するために入念にリサーチしていました。しかし実際に行ってみるとウメオの水質はとても良かったみたいで特に問題はなかったです。それに、自分で持って行ったヘッドシャワー(硬水を軟水に変える装置)やシャンプー類をすべて持参していったので特に大きな影響は受けずに済みました。今思うとここまでやるのは異常だったなと思うのですが、体調はいろんなところに影響を及ぼすので、心配であればやっておいて損はないかなと思います。
ウメオのこの特殊な気候も特に問題なかったです。年によっても違うとは思うのですが、個人的には寒さも積雪量も札幌とそんなに変わらないんじゃないなかと思っていました。現地の人に一番寒くて-30度くらいと聞かされていたので、ウィンターコートや靴を新しく買わないといけないかなと思っていたのですが、私が経験した最低気温は-21度で、しかもたった一回だけでした。さすがにその日はすごく寒かったですが、平均すると-7,8度くらいで札幌にいるときと全く同じ服装で全く問題なかったです。ただ日照時間は11月くらいからどんどん短くなっていくので朝起きることが不可能になりました。これが原因で少し体調を崩すこともありましたが、すぐに慣れました。

留学中の英語学習

留学前と留学中一番頭を悩ませたのは、英語学習でした。ウメオ大学はTOEICのスコアのみで出願が可能であったので,出願時に英語で苦労することはなかったのですが、自分が想像していた以上に3年前期が忙しく英語の勉強ができていませんでした。その上、今までTOEFLやIELTSなどスピーキングやライティングなどのスキルを測る試験を受けたことがなかったので、本当にこのまま留学に行ってやっていけるのか不安でした。もともと英語を勉強することは好きでリーディングは得意でしたが、留学先ではリスニングやスピーキングなど総合的な力が必要になってくるので、たとえ出願がTOEICのみでできたとしてもまんべんなくスピーキングやライティングも事前に勉強しておいたら少しは不安が和らいだのかなと思います。
留学中も語学の悩みは絶えませんでした。たった5カ月でネイティブ並みになろうというのは不可能ですが、自分の英語力が成長している気がしなくて少し心配になることもありました。日本から持って行った文法書を復習してみたり、英語で映画を見てみたり自分なりにいろいろ工夫してやってましたが、結局どこまで効果があったのかはよくわかりません。ただ途中で、ずっと英語のことばかり考えているのがばかばかしくなってきて、「5カ月で完璧にマスターするのは無理だし、留学の目的は英語だけじゃない!」と開き直れるようになって、気持ちが楽になりました。「留学に行ったからには英語が喋れるようにならないとだめだ」というふうに勝手に思い込んでいたのが、逆にプレッシャーになっていました。英語が上手に話せるに越したことはありませんが、もしそのスキルが十分でなかったとしてもなんとかやっていけましたし、むしろ英語よりいろんな人と会話をするために幅広い知識を蓄えておくほうが役に立つのではないかなと今では思います。

留学を終えて

本当に最初から最後までドタバタしていたスウェーデン留学でしたが、本当に貴重な経験ができたと思います。留学先で何か特別なことをしてきたわけではありませんが、留学中いろんな人に助けてもらい、人の温かさを感じた5カ月間でした。スウェーデンで出会った友達、先生のみならず、日本からもたくさんの人にサポートをしていただき本当に感謝しています。準備はいろいろと大変でしたが、今までの大学生活の中で一番充実していた時間でした。この留学で得られたものを今後幅広く活かしていけるように、残りの大学生活も充実させていきたいと思います。

 

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