英国 ニューカッスル大学 交換留学 (大釜 新着2016)

ヨーロッパ

大釜 和寿(経済学部4年・高井ゼミ)

留学先

Newcastle University, UK. 2016/17 Semester One (2016/9/26~2017/1/26)
UG non-Erasmus Exchange Student in SMLS

動機

自分の実力を海外で試したかった、英国への憧れ、ジェームズ・ボンドになりたかった

費用

1週間のスケジュール

留学前後のスケジュール

はじめに

留学を考え始めたのは大学受験が終わってからです。高校の友人が国際系の学部に進学したり、受験の次は留学という雰囲気だったり、新渡戸カレッジの誕生だったりと何かと留学を身近に感じていました。入学式前に新渡戸カレッジの試験があると知らず、入学式ぎりぎりに到着した私は、結果的に2年次に新渡戸カレッジに入校しました。
実は入学して間もない1年生の5月に、高井先生に個人面談を申し込み、2年の夏休みまでにスコアを取るために継続して英語を勉強するようにとアドバイスをいただきました。入会した国際交流サークルSACLAで中国人留学生の友達が多かったため、1年次後期から中国語も本格的に勉強し始めました。3年後期の留学を見据え、英語圏と中国語圏の大学どちらにも行けるように、IELTS6.5とHSK5級180点以上の2つを目標にして、サークルでスピーキングを練習、英語演習と中国語特訓班、図書館での音読でその他のスキルを細々と練習していました。
2年生に入ると高校の友達やサークルの同期が留学について真剣になり、米国やオーストラリアに行き始めて二番煎じが嫌だったこと、現実的に中国語で経済学を受講するのは無理があること、漠然とした憧れの3点から、英国への交換留学を申請することに決めました。IELTSを9月に受験し、6.0という点数で申し込める英国のシェフィールド大学を申請したところ、学内面接では志望動機の甘さもあって面接官から厳しいコメントをいただき落選し、代わりに同じ英国内のイーストアングリア大学を奨められました。
3年生になって同大学へ申請すると、その手続きの途中でIELTSスコアやGPAなどで手続きが難航、結果的に私の成績で留学するには学期開始2ヶ月前から始まる準備コースに100万円かけて通うことが条件となってしまいました。目標としていたHSK5級も取得できたため、改めて中国国内の大学も視野に入れて留学先を再考しましたが、高井先生やゼミの先輩とも相談し、就活と卒論を終えた4年次後期に留学することに決め、もう一度英語の勉強を始めました。そのために夏休みから就活を始め、IELTSを12月に受験して6.5を取得し、結果的にニューカッスル大学へ申請しました。その後の学内面接では2回目という慣れもあって無事通過することができ、ニューカッスル大学の手続きを開始しました。
4年生になり就活を終えて、今度は無事に入学許可証をいただき、後期からの留学を決めることができました。就活が終わった6月から9月までの3カ月で卒論を何とか終わらせ、9月中旬に渡英しました。

留学中

1. ニューカッスル・アポン・タイン

留学先の大学はロンドンから北に400km離れたニューカッスル・アポン・タイン市にあります。炭鉱の街として栄え、現在ではイングランド北部の最大の都市として機能しています。街がコンパクトにまとまっており、基本的に生活で不便することはありません。また一人当たりのアルコール摂取量が英国内で最多というデータを裏付ける個性的なパブが街中に乱立しており、毎夜地元の人や大学生で賑わっています。ホワイトブリティッシュ人口が80%以上を占め、移民はあまり多くなく、生活していると基本的にはブリティッシュイングリッシュが耳に入ってきますが、訛りの強い”ジョーディ”というニューカッスルの方便に悩まされることもあります。イングランド内の他都市と同じように大学都市として成り立っており、世界中からの留学生が住んでいるので異国人に対しても寛容です。EU離脱是非の国民投票でも、残留派が過半数を占めています。

2. ニューカッスル大学

ニューカッスル大学はオックスフォード・ケンブリッジ大学に次ぐダラム大学の医学部が分裂し、その後総合大学になって現在に至ります。そのため医学部の難易度は英国内でもオックスフォード・ケンブリッジに匹敵するほどの成績と学力が求められるようです。ラッセルグループという英国内の研究重点大学の一角を担っていることもあり、その他の学部も非常に質が高いと評判を受けています。
また、大学が街のど真ん中にあるため、学校を出るとすぐに街中にアクセスできます。敷地面積が広く、キャンパス内に牧場がある点、大学発足の経緯、厳しい冬寒さ、卒業生満足度国内1位という点を鑑みると、なんとなく北大に近いものを感じ、到着してすぐにこの大学が好きになりました。

3. 大学生活

3.1 寮

寮は出発前の入学手続きの段階で申し込むことができます。基本的に、申し込めばキャンパス内のどこかの寮に入ることはできるようです。ホームページを参照に、値段(週£99~200)、立地、アパート型かフラット型かを加味したうえで第5希望まで申請できます。どの寮も基本的に留学生と新入生を対象としており、フラット型を選択すると割合的に英国人新入生がフラットメイトになります。
私の寮はキャンパスの一番北側、街中から徒歩で20分の距離にあるフラットでした。隣にスポーツセンターがあり、基本的な大学建物に近いこと、個人部屋と共同キッチン・シャワー・トイレというフラットメイトとの距離の近さから、割と人気のフラットでした。テレビやWi-Fi、基本的な生活器具が元から揃っており、かつ毎週月曜日に清掃員さんが掃除をしてくれることを考えると、ポンド安で月6万円であったことも加え、非常にいい環境であったなと感じます。

3.2 新歓

留学生は交換留学生と本科生問わず、まず学期開始の2週間前に到着するよう指示を受けます。到着して最初の1週間は留学生だけの新歓期間で、日中に事務手続き等や役所への届け出、口座開設等を終えると、毎夜新歓イベントが大学の学生部主催で開催されます。ここで全世界の留学生に出会うことができます。
次の1週間、£65を支払うとリストバンドを購入でき、大学全体の新歓である”フレッシャーズウィーク”に参加することができます。5日間朝から晩まで様々なイベントが開催され、時には人気のイベントの予約のために朝8:30から並ぶこともありました。夜になるとイベント会場が街中のクラブになり、皆が踊り狂います。

3.3 講義

2週間の新歓と同時並行で履修登録があります。ニューカッスル大学への交換留学は、厳密には現代語学部に所属することになります。ただし、籍を置くだけの便宜上と日本語学科の学生と接点のためであり、経済・経営・会計の講義はもちろん、基本的にはどの学部の講義も受けることができます。加えて、大学が指定する上限いっぱいの単位数を必ず履修することと、最低1つは違う学部の講義を履修することが条件としてあります。
また、到着して5日以内に英語ネイティブではない留学生に対して、大学が英語テストを課します。その点数次第で大学の付属英語学校であるINTOの英語の授業を奨められます。プロの英国人講師による論文の書き方、プレゼン、発音向上などの授業に無料でいくつでも出席することができます。
私が履修した講義は以下の通りです。

・HSS2001 British Culture
留学生だけ対象にした講義で、レクチャーとセミナーが毎週1度ずつあります。午前中に英国の社会階層や国際関係、歴史等の授業を受け、午後にそのことについてのセミナーがあり、ディスカッションを行います。
成績は中間エッセイ:期末テスト=50:50で評価されます。
・ECO2006 Environmental Economics
基本的な環境経済学の講義で、再生可能資源や環境評価を数値化し、グラフに起こすのがレクチャーのメインでした。セミナーでは、事前に参考資料とそれに関する設問が与えられ、それについて議論します。成績評価は期末テスト100%です。
・ECO2008 International Economics
前半で基本的なモデルと関税についての説明をし、後半で為替レートについての仕組みが扱われます。TED登壇者のような講義を展開する先生で、惹きつけられました。セミナーでは事前に課された授業内容に関する設問の答え合わせをし、そこに先生が補足をします。成績評価は期末テスト100%です。
・ECO3010 Monetary Economics
金融経済学の講義ですが、英国金融に焦点を当てた講義です。前半で金融政策について触れ、後半は金融危機や中央銀行の政策について扱われます。セミナーではイングランド銀行が発行する政策決定の仕組みなどの記事についての参考文献を読んだうえで答え合わせを行います。成績評価は期末テスト100%です。
・ECO3024 Development of Economics
基本的な開発経済学の授業ですが、唯一の非英国人講師であり、一番理解しやすかった講義です。前半は国連が定めた指標等、開発目標についての説明で、後半はこの講師の専門だと思われる児童労働についての講義でした。セミナーは授業終盤に連続して行われ、グループになってあるテーマについての討論をクラス全体に向けて行うという内容でした。これが成績評価の15%を占めます。残りの85%が期末テストによる評価です。
・INU7214 Improving your pronunciation
一回きりの講義ですが、なぜネイティブのように発音ができないのか、どうしたらきれいに発音ができるかというのがメインテーマです。結論として、母国語用に顎関節が固定される前に発音を身につけなければネィティブのような発音はできないこと、重要なのは大きくはっきり発音することが大事と教わります。
・INU9112 Writing for Humanities & Social Sciences
各2時間、全8回の講義で人文社会学のエッセイや論文の書き方を指導されます。この講義でエッセイの書き方を学び、学生がそれぞれの専門授業の課題のエッセイで練習するようにという狙いの下、論文構成や引用の仕方等、”plagiarism”を避けるようにと徹底的に指導されます。

経済学部の授業では、レクチャーは基本的に講師が話すのみで、2週間に1度のセミナーで理解を確認するように構成されています。セミナー以外では課題等はありませんが、毎回授業前にアップロードされるスライドの予習や復習をしないと、なかなか英語の講義を理解することが難しく、とても苦労しました。

3.4 課外活動

講義以外に以下の活動に参加していました。
・Anglo-Japanese Society
ニューカッスル大学には日本語学科があり、全学年合わせて50人以上が在籍しています。その中の上級生と本科生の日本人が様々なイベントを企画してくれる他、毎週月曜日に大学近くの一角を貸し切って飲み会があります。
・Catholic Society
何か現地の文化に触れたいと思っていた私に、フラットメイトが誘ってくれて参加しました。毎週日曜日の18:30から近所の小さい教会で大学生を中心としたMassが行われ、それに参加していました。こちらの人達の宗教に対する考え方に触れることができたいい機会でした。
・ボランティア
毎週水曜日、地元の小学校の放課後の日本語クラブのTAをしていました。英国の小学校の様子を垣間見ることができたのと同時に、小学生の好奇心や文化に対する感受性、楽しそうに学校生活を送っている様子を肌で感じ、なんとなく羨ましさを覚えました。
・The Brexit Lecture Series
毎週水曜日の夜にBrexit後の影響について、オムニバス形式で移民、雇用、税負担について様々な研究者を招いた講義がありました。共通していたのは、巷で言われているほど深刻ではないこと、悪いことばっかりではないこと、まだデータが揃っておらず判断できないと結論付けられたことでした。

所感

1.最終学年の後期に交換留学するということ

私の交換留学で比較的特異な点は、この点にあると思います。卒業後の進路を決め、論文や単位等の卒業要件を満たした後に、私は交換留学をしました。当然、良い面と悪い面がありますが私が感じた限りでここに記そうと思います。

1.1 最小限の犠牲と時間的制約

当然、留年する場合は時期による大きな変化はありませんが、留年せずに1学期間留学する場合、他の時期の留学に比べて、主として進路に対して、犠牲にする時間や不利を最小限に抑えることができます。例えば卒業後に就職する場合、通常であれば3年生の後期から4年生の前期にかけて就職活動を行いますが、3年後期の交換留学であれば期間が全て被ってしまいます。最近は留学帰りの学生を対象とした採用活動も増えているそうですが、留学しなかった場合と比べれば、選択肢が狭まってしまうことは避けられません。また大学院入試も、形態によっては留学前に入学試験を受験することができます。
その半面で、時間的に追われることが多いのも事実です。帰国後に卒業して就職する場合、出国前に内々定を獲得し、卒業論文を終わらせる必要があります。就職活動の全てのステップを早めに進めて、それにあわせて留学手続きを行い、余裕が出てきたところで卒業論文に取り掛からなければいけません。留学中に就職活動をしたり、卒業論文を執筆したりすることは留学中の生活から考えると現実的ではありません。

1.2 精神的余裕と保守傾向

帰国後の卒業や進路が留学前に確定している場合、留学中には目の前のことだけを考えて生活することができます。私の場合は、勉強でどうにも手が出ない時やホームシックになった時、日照不足で軽く鬱気味になった時に、「頑張っても頑張らなくても帰国後は何も変わらない」と根拠のある言葉で自分を落ち着かせることができました。もちろん交換留学のため、義務があることには変わりませんが、過度に自分を追い詰めてしまうことがある私にとっては、特に単位の取得に対するプレッシャーや、帰国後の就職活動への懸念を完全に除去できることは大きなメリットの一つだと思いました。
その反面、余裕によって妥協してしまう場面や守りに入ってしまう場面がいくつかありました。例えば、特に講義においてはやらなければいけないこと以外はすることがなかったり、必要以上に冒険をしなかったりと、その後に大学院進学や就職活動を見据えた場合と比較すると、ハングリー精神に欠けたかなとも思います。

1.3 知識面での余裕とプレッシャー

専門の授業を受け始めてから2年以上経過し、しかもほぼ卒業要件を満たしているため、留学先の周りの学生と同レベルの知識がついていることで少し講義へのハードルを下げることができます。英語での講義は慣れないうちは辛いものがありますが、前知識が入っていると話の展開を追うことはできるので、幾分か楽であると思います。
私だけかもしれませんが、周りが下の学年であったり、その周りが難なく講義をこなしていたりするのを見て、自分が苦戦していることに劣等感を感じることがありました。自分が日本でやってきたことが全て無であったような気がして落ち込んだことがあったのも事実です。

2.日本でもできることとできないこと

交換留学の中で、しなければできないことと、しなくてもできることがいくつかあるなと感じました。私の場合は取捨選択の後に交換留学を選んだわけではありませんが、交換留学を選ぶことによって何かを犠牲にしなければならない場合、それを犠牲にせずに日本にいたまま交換留学に比較的近い経験を積むことも可能であるし、選択肢の一つであるとも思います。
交換留学でしかできないことをあげるとすれば、海外の大学の正規生として学生生活を送れることと、観光や旅行ではない異国での生活奮闘経験の2点だけだと個人的に思います。もちろん大学によっては細かいところは異なりますが、ニューカッスル大学を含め基本的に交換留学先での身分は正規生と同格になります。学生証が発行され、図書館等の設備や課外活動等の参加資格等、もちろん試験や成績評価も全て正規生と同等に扱われます。現地の大学生と一緒にキャンパスライフを送ることができるのは交換留学の醍醐味の一つであり、生活リズムや行動パターンも図らずとも現地の学生と一緒になるため、日本での大学生活とは異なった生活を経験できます。また、学生生活を送るに際して、生活する術や現地に溶け込む難しさの実感や、人間関係のゼロからの構築等も旅行とはまったく異なった経験であると感じました。
一方で、日本にいてもできることがあります。留学の醍醐味でもある外国人とのコミュニケーション、外国語での専門講義の2点が代表例です。1点目の外国人とのコミュニケーションは、私自身がサークルに入っていたのもありますが、海外にいないと外国人に出会えないということはないと考えています。大学内での留学生との接点や、外国人が集まるパブ等でいくらでも交友関係を築くことはできます。ただ、日本での外国人とのコミュニケーションは基本的に相手が日本に少なくとも興味があり、こちらに対してポジティブなイメージを持った上でのものであると留学してから気づきました。また、英語をはじめとした外国語での専門講義も日本の大学でも受講できるし、インターネットで世界の有名大学の講義が無料で観れることを考えると、留学をせずとも経験することができます。また、英国内では「勉強は自分でするもの」という風潮が強いため、特に経済学では自習がメインになります。その教材はもちろん日本の大学の図書館やアマゾン等でアクセスできるため、留学じゃなければ触れられない知識や学びたいことは少なくとも学部生レベルではあまりないと思います。
また、留学の大きなテーマの一つである英語力の強化ですが、専門講義では英語での発言力や専門講義、エッセイの書き方は身につけられますが、私自身の感覚として基本的な英語力は教室以外での自主的な積み重ねが必要であると感じました。特に意識的に続けなければいけないのは語彙力の強化だと思います。言いたいことが話せなかったり、単語が出てこなかったりという問題に常に悩まされましたが、大学受験レベルの単語帳を毎朝音読しブラッシュアップしながら新しく出会った単語を少しずつ覚えていくように努めました。しかし、これを含め英語学習の大半も日本でできることですし、私の後悔の一つでもあります。語学学習に完璧はありませんが、留学に来る前にどれだけ学習したかが留学生活を充実させるかの一つのカギであるようにも思います。

最後に

様々な壁にぶつかり、思い返せば辛いことのほうが多かったような気がする留学生活でしたが、終えてみてやってよかったなと素直に思います。私の場合特に社会に出る前段階としての位置づけだったこともありますが、これまでの人生で得てきた自信を全て捨て、0からやり直すという意味では自分自身を見つめ直す非常に尊い経験だったように思います。
その過程でお世話になった、高井先生や北大とニューカッスル大学の国際本部の職員の方々、ゼミのみんなや現地で出会った素晴らしい友人、そして家族に心から感謝しています。


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