留学のすすめ2: 交換留学のすすめ (高井哲彦 Vol.5)

留学マニュアル

■交換留学とは何か
◇交換留学とは、所属大学が学費免除・単位互換の学生交換の協定を結んだ協定校へ選抜派遣される留学です。大学を代表する名誉を伴い、半年留学なら留年しないで済みます。留学生交流支援制度(短期派遣)やクラーク財団やニトリ等の奨学金にも応募できます。
*
◇その代り、単位取得、留学報告書、危険行動禁止(車運転・危険地域等)、報告・相談(出入国・宿泊旅行、履修科目、連絡先)等の義務が伴います。また、北大学費納入が前提のため、学費の安い国(中国等)では私費留学より高くなることもあります。
*
■留学パターン
◇5年コース:学部1年次に1回目のTOEFL-iBT受験。2回目でTOEFL-iBT80取得。2年次10月に留学申請。12月に北大面接合格。3年次9月~4年次6月に留学。5年次に卒業(以下、大学院生は学部3年次を修士1年次や博士1年次に読み替えて下さい)。
◇最短コース:3年次9月~翌1月に留学。4年次に就職活動を経て、卒業(留年なし)。
◇進学コース:3年次9月~4年次6月に留学。4年次に大学院受験を経て、卒業・進学。
◇日本式通年コース:4年次2月~翌1月に留学。帰国と同時に就活、5年次卒業。
◇二段階コース: 4年次9月~翌1月に初留学。5年次9月~翌1月に再留学。
*
■留学先の選択とTOEFL-iBT(IELTS)スコア
◇TOEFL-iBT80以上が理想。米・加・英・豪・ニュージーランド・世界トップ校も。
◇TOEFL-iBT61-80なら米国と欧州の一部も可能。早めの申請をしつつ語学強化を。
◇TOEFL-iBT61以下なら非英語圏の英語プログラム。渡航までに語学力強化が必須。
北欧、中東欧、東南アジア、東アジア、南アジア等には世界的なトップ校も。
◇第二外国語力(証明書)を持つなら、非英語圏の現地語研修や現地語プログラムも。
*
■交換留学の時期
◇北大外国語教育センターの「外国語演習(海外研修)」は、英・中・韓・独・仏・露語の夏季語学研修の単位や奨学金を認めてくれます。交換留学の予行練習にも最適です。
◇交換留学は、指導教員・研究室・研究テーマ・専門基礎が固まった後を勧めます。
◇3年次後期の半年留学(9月~翌1月)なら、留年せずに留学できる可能性があります。1年留学の場合も、卒業単位、入試合格、卒業論文完成の3点を満たせば、留年せずに大学院進学できる可能性があります。
◇3年次後期から1年留学し、留年して5年次に就職活動する場合、5年次前期に休学(学費不要)しても卒業できます。1年留学の代わりに、2ヶ国に半年ずつ二段階留学することも不可能ではありません。
◇4年次後期の半年留学も、卒業単位、就職・進学内定、卒業論文完成の3点を満たせば、留年せずに留学できる可能性があります。2度目の交換留学も不可能ではありません。
◇交換留学は、専門単位の取得が原則ですが、協定校での中国語、韓国語、独語、仏語、露語の集中語学講座は交換留学に認められることがあります。
◇協定校の増減、英語プログラム・語学研修の有無、語学資格要件、対象学部、願書締切等は、毎年変わります。最新情報や新発見は自力でHP等から見つけるべきです。前例ない協定校の場合、トラブルも多く、本人の覚悟と研究室の支援が必要でしょう。
*
■留学志望動機の深め方
①志望動機書では「語学力向上」「異文化理解」等は当たり前過ぎるので省略して下さい。
②留学を踏まえた卒業論文題目案と帰国後の進路案を列挙して下さい(1-2年生でも)。
③留学を希望する大学の専攻名・履修科目名、国・都市の独自性を調べて下さい。
④北大での履修成績・語学スコア、卒業論文の進捗、VISA条件を踏まえ、多すぎず少なすぎず実現可能な履修科目数や卒論調査先候補等を、調べた上で列挙して下さい。
⑤申請時点で履修成績・語学スコア・卒業論文進捗に不足があれば、ステップを区切って目標や期限、実現手段を設定した上で、準備計画書を作って下さい。
*
■交換留学してはいけない人
海外渡航の手段は色々あります。以下の人は無理に交換留学を選ばない方が良いでしょう。
①旅行をしたい。
交換留学では単位取得が最優先で、休暇旅行時も北大に連絡する義務があります。旅行の優先順位が高く、義務を履行できないなら、休暇・休学中に自由旅行しましょう。
②「英語を」学びたい。
交換留学の英語プログラムでは、冒頭から「英語で」専門の授業が始まってしまい、英語を学ぶ機会はありません。英語上達を目指すなら私費英語研修の方が効率的です。
③専門成績も悪く卒論・将来計画も固まっていない。
北大できちんと勉強していないと本末転倒です。まず短期プログラムを試したり、交換留学を半年後に延期したりしても良いでしょう。
*
■危険国への交換留学
◇学部生の危険国留学はよほど専門的な必要性がない限り勧めません。外務省が「十分注意してください」以上の危険情報を警告する国を「危険国」と定義します。警報の出ていない留学先の方が多いですし、ガイド付き旅行や大学院進学の後でも遅くありません。
◇危険国に交換留学するには、①語学力(TOEIC600以上)、②途上国経験、③危機管理体制の3点が条件です。とくに以下の留学先は研究室(部局または指導教員)の危機管理体制(危険国の経験・人脈・知識)が問われます。学生が研究室に所属していない場合、研究室が危険国を専門外とする場合、危険国留学は北大正課の交換留学には認められません。
*
◆タイ、ロシア、フィリピン、セルビア:研究室に定期連絡体制(旅程等)がある。
◆インド、スリランカ、ネパール、ブラジル、ザンビア:上記に加え、研究室に危険国指導体制(教員・先輩)がある。学生の研究計画・英語力・途上国経験も優れている。
◆バングラディッシュ、インドネシア、サウジアラビア、カザフスタン: 上記に加え、本人または研究室にイスラム知識がある。
◆南アフリカ、ナイジェリア:学部交換留学には不適当。専門研究者なら自己責任で。
◆「渡航の是非を検討してください」以上の警報国・地域:留学・旅行・立入厳禁。
◇参考:中国・台湾、マレーシア、ベトナム、モンゴル:危険情報なし(2012年1月)。
*


[まとめ]留学マニュアルに戻る
留学のすすめ1: 留学の7つの誤解 (高井 Vol.5)
留学のすすめ2: 交換留学のすすめ (高井 Vol.5)
留学のすすめ3: 語学の学習 (高井 Vol.5)
留学のすすめ4: 留学の準備 (高井 Vol.5)
留学のすすめ5: 留学の生活術 (高井 Vol.5)
留学のすすめ6: 留学の勉強術 (高井 Vol.5)