アールト大学 交換留学 大学院経済学院 2年 道端莉輝

ヨーロッパ


1.留学先

Aalto University(フィンランド・エスポー)、School of Science、Department of Industrial Engineering and Management

2024年8月~2024年12月


2.留学の動機

・人口規模が小さい国であるが様々な世界的な企業を輩出しているフィンランドにおいて経営を学ぶため

・将来交通分野に携わりたいと考えており、先進的であるフィンランドの交通と日本の交通の違いを実感するため


3.費用

渡航準備

・渡航費 30万円強(フライトチケット25万円、在留許可取得5万円)

・海外旅行保険 5万円弱

・TOEFL受験料 5万円

現地

・家賃 32万円(月8万円)

・生活費 12万円(月3万円)
・交際費 10万円

計:約100万円


4.留学スケジュール

2023年11月 TOEFL受験、交換留学申請

2024年初旬 学内審査通過

2024年4月 Aalto Universityから交換留学許可通知

2024年7月 在留許可申請

2024年8月 在留許可取得、渡航

2024年8月末 Period 1開始

2024年10月初旬 Period 1終了

2024年10月中旬 Period 2開始

2024年12月初旬 Period 2終了

2024年12月末 帰国


5.学校生活

講義

Aalto Universityでは以下の5つの講義を受講した。

・Advanced Strategic Management

この講義ではケースを用いて具体的な経営戦略の策定について学んだ。主にグループワークで進行し、与えられた課題に対してグループで議論してレポートやスライドを提出し、時折発表もあった。この留学で受講した講義の中では最も経営学的なものであり、適応は早かった。

・Product Management

これはプロダクトマネージャーという職種への理解を深めるための講義であり、週末に課されるレポートで評価されるものであり、そのレポートもWordで書いた文章ではなくパワーポイントで視覚的にもわかりやすいものを作成する必要があった。最初は慣れずうまく作れなかったが、回を追うごとに慣れていき、最終的にレポート課題で満点をとれるまでになっていた。

また企業訪問もあり、フードデリバリーのWoltやSCMプラットフォームを提供するRelex Solutionsの本社に行き、プロダクトマネージャーの講義を聞くという機会もあった。

・Management of External Resources

この講義は今回の留学でも一番難易度が高く、準備学習に時間を割かれた。外部の経営資源のマネジメント(例えばアウトソーシングなど)についての講義であり、今までの大学生活で受講してきた講義にはないテーマであったので適応に苦労した。

 講義前準備に論文2本の熟読が課され、講義内ではそれについての小テスト、また後半は実際のケースを用いたディスカッションを行った。

・Product Leadership

 この講義は先述のProduct Managementと類似したものであるが、職種というより製品開発や改善の方法にフォーカスを当てたものであった。講義内では個人レポートとグループレポート両方が課され、グループレポートではWoltにインタビューを行い、同社のプロダクトマネジメントの特徴や改善点について議論した。

・Innovation in Context

 この講義はイノベーションをテーマにしたものであり、フィンランドにおけるスターバックスコーヒーの経営改善策を考えたり(フィンランドはコーヒー文化が盛んであるにも関わらず、スターバックスの出店は数店舗と限られている)、レモネードスタンドがどうやったら繁盛するか考えたり(他のヨーロッパ出身の学生に聞いたらレモネードスタンドはやらないと聞いたが教員がカナダ出身だから?)するなどユニークな講義であった。

キャンパスライフ

Aalto Universityのキャンパスはヘルシンキの隣の市であるエスポーのオタニエミにまとまっていた。キャンパスは旧・ヘルシンキ工科大学の卒業生であり著名な建築家であるアルヴァ・アールトが設計したものであり、綺麗な建物がならんでいる。また北海道大学のようにキャンパス内に林や池などがあり自然も感じられるキャンパスであった。

フィンランドの学生の特徴として皆がオーバーオールを着用していることがあげられる。これはフィンランドの学生文化の一つであり、各学科ごとにデザインや色が異なるオーバーオールを持ち、学内イベント等では現地学生は皆着用して参加している。このオーバーオールには企業ロゴも入っており、企業と学生の距離も近いことに関係していそうだと感じた。


6.現地での生活

ヘルシンキについて

 フィンランドの首都であるヘルシンキはヨーロッパの年の中でも清潔であり、前評判通り住みやすい街であると思った。HSLによって運営されている交通機関はしっかり整備されており、月数十€で決められた地域内のバス、メトロ、トラム、ボート等が乗り放題であった。HSLのスマートフォンアプリも優秀であり、Googleマップよりも正確かつ効率的なルートを探索してくれた(しかもトラムや一部のバスの位置情報はリアルタイムでわかる)。ただ、これはいろいろな交通手段が一つの運営元のもとにあることが前提であり、日本のようにいくつもの交通事業者が存在する環境ではここまでシームレスな交通を実現するのは難しそうである。

 日照時間は到着当初は朝4時から明るく、夜9時に日が沈むというように長かったが、11月になると太陽が朝9時から昼3時までしか昇らないという状態であり、なおかつ寒い中暖房器具故障&備え付けのタオルケットが極薄であったため一時期毎週風邪をひいていた。

日常生活

 現地の生活でまず一番に苦労したことはアパート探しであった。交換留学の許可が下りてすぐにHOASという学生向けアパートの申請をし、すぐにエスポーのアパートを紹介されたのだが間違えて拒否してしまい、プライベートマーケットでアパートを探す羽目になった。結局フィンランドに到着しても住む場所が決まっておらず、数日間ホテルに泊まりながら物件を探し、入国から10日後くらいにヘルシンキにて月500€のアパートを見つけることができた。

 ちなみに私がアパートを見つけためソルナイネン駅周辺は外務省のHP上でも治安が良くない地域であるとされていた。駅前広場は”Piritori”(Amphetamine Square)との別名があり通りから外れた公園に行けば注射器が落ちているような少しディープな地域であって、現地の学生に住んでいる場所を言うと「あー、あそこね」となる。(しかし家賃は安くヘルシンキ中心部へのアクセスも良好なので多少治安悪くてもいいという人にはお勧め)。

友人

 現地の友達を作るのは苦労しなかった。留学初日に同じ学科の交換留学生たちと朝食をとるという機会がありその時に留学を通して仲の良かった友人ができ、その後も交流の輪を広げていくことができた。

 友人たちとは昼食をともにしたりスポーツの試合を見に行ったり郊外のサウナを試しに行く等、現地の文化を共に体験したほかそれぞれの国やお互いついて話したりした。

また、学外でもスポーツを通した交流があった。冬になりスケートリンクに行くとフィンランド人に何度か声をかけてもらい、いろいろな年齢の方々とアイスホッケーを通して交友関係を広げることができた。


7.おわりに

本留学においての最大の成果は現地での人間関係の1からの構築であると思う。北海道大学の大学院でも周囲が留学生しかいないという状況を経験したが、フィンランドにおいては日本語のサポートが一切無いという点で大きく異なっており、他の交換留学生たちと学業面・生活面の両方で助け合うことができた。

これから社会人になり長期的または短期的に異なる環境、人々と働くことが一層増えるため、今回の経験は有益なものとなるであろう